お父ちゃんの布団

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お父ちゃんの布団

 お父ちゃんの布団


 潜り込むとそこにはお父ちゃんがいて、お父ちゃんの温もりが感じられた。




 お父ちゃんの布団


 お父ちゃんが仕事に行ってるときに、僕はそこにプラレールを敷いて積み木のビルを建てた


 そこは僕だけの街だった





 お父ちゃんの布団

 

 休日のお父ちゃんは昼頃になっても、大いびきをかいて寝ていた




 父さんの布団


 そこには冷えピタを貼った父さんが寝ていた、どうやら酒を飲んで店の外でそのまま寝ていて、風邪を引いたらしい




 父さんの布団


 そこには湿布を貼り横向きに丸まって寝ている父さんがいた


 どうやら腰を痛めたらしい


 父さんは「もう、俺も歳かもな」となぜか照れくさそうに笑っていた



 


 クソオヤジの布団


 そこには俺の夢に反対したクソオヤジが、俺に背中を向けて寝ていた


 「じゃあ、行ってくるよ・・・もう帰ってくることも無いだろうけど・・・」

 俺はクソオヤジの背中にそう声をかけるが、クソオヤジは何も答えない


 「じゃあな・・・」

 俺はクソオヤジの背中に背中を向けて、部屋を後にする



 「でっかくなって、帰ってこいよ」

 クソオヤジはボソリと俺の背中に呟くと、わざとらしいいびきをたてはじめる


 (言われなくても・・・・・)

 俺は心の中でそう答えて、家を出ていった





 親父の布団


 俺はあれから、東京で会社を興し都会の波に揉まれながらもなんとか会社を軌道にのせることが出来た


 頼れる仲間も出来、愛する家族も出来た


 そんな中、親父の危篤の報せが入った


 「親父・・・・!」

 俺は親父の部屋の扉を乱暴に開け、親父の元に駆け寄る


 「おぉ、帰ってきてたのか・・・」

 そこには痩せこけて、今にも飛んでいきそうな親父が横になっていた

 

 「お前の事はよく耳にしてたぞ・・・裏で苦労はしてきたのかもしれんが・・・うまくやってるみたいだな・・・・・」

 親父はポツリポツリと言葉を紡ぐ

 「あぁ・・・なんとかな」

 そんな親父を見て、俺は声を震わせながら答える




 親父の布団


 その夜、俺と親父は時を忘れて話し合った


 今までの事・・


 これからの事・・・


 何が食べたい・・・・


 どこに行きたい・・・・・


 些細な事を沢山話し合った、今までの時間を急いで取り戻すかのように・・・・・・





 お父ちゃんの布団


 夜が明けて


 そこには冷たくなった親父が安らかに眠っていた


 端で泣きじゃくる俺をよそに、親父は幸せそうに笑っていた


 「さよならお父ちゃん」


 俺はそう言うと親父の顔に白い布をかけた


 

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