🍁My Maple Life 🍁

🍴今日の二品（大根サラダ）🍴

大根。

まな板の上に置かれたその白い野菜を前にして、「さて、何を作ろうか？」と頭を捻る。大根を買うと、いつもこうだ。

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実家にいるときは、料理なんてまともにやったことがなかった。

そんな私が、１年半前、一人暮らしを始めたとき。

手はじめにと、料理本を１冊買ったことを思い出す。

あれからずいぶんとご無沙汰してしまったその本を本棚から取り出し開く。

が、おあいにく様、大根のレシピはそう多くない。大根はあっても、鶏もも肉なんて家にはない。冷凍庫で眠らせているのは鶏むね肉だ。

本は手頃で明快だ。インターネットという莫大な情報の波に飲み込まれ、打ち上げられた先が外国、なんてことは有り得ない。

そう、そんなことは有り得ない。そう思っていたはずなのに。

今、自分が求めている答えは見つからなかった。

代わりにと、検索を始めた脳内では紡ぎ車が回り始める始末。

自分の脳内レシピのひもじさにも呆れて溜息が出てしまう。

それではここで質問です。なぜ私は、大根を買ってしまったのでしょうか？

１．安売りをしていたから

２．野菜の品数を増やしたかったから

３．艶があって美味しそうだったから

勘の良いあなたは、もうお気づきでしょう。そう、答えは２番です。

母から教わったことの中で、私の食生活に強く根を張ってること。

それは、「毎日、幅広く、たくさんの種類の野菜を摂ること」だった。

子どものような感覚で、いつも周りを困らせていた母ではあったが、自分より家族の食事を優先する人だった。

野菜をふんだんに使った料理を、私や姉、父にふるまい、自分はほんのわずかな残りを食べるだけだった。

私の分に取り分けられた野菜を、母にも分けようとすると、自分はその分ご飯を食べるから要らないよ、大丈夫だよ、と笑って話していたことを思い出す。

…大丈夫なわけあるかい！

今だから言える。母のもとから離れた、今だからこそ分かること。

炭水化物は野菜の代わりにはなれない。野菜も一種の炭水化物だが、質が違う。

ビタミン・ミネラル・食物繊維といった、耳馴染みのある栄養素は、精製された白米

では、残念ながら補えないのだ。

食事が白米などの炭水化物に依存してしまうと、血糖値や血圧の上昇につながる可能性がある。そう、本で読んだのだ。

「最近太ってきて。血圧も高くなってきたし」

テレビで、ラジオで、身近で聞くお悩みナンバーワン？は、母においても例外ではなかった。このまま行けば、毎年の健康診断で「要精密検査」と結果が出る日もそう遠くはない…マジか。そんなことになったら気が気じゃない。

そんなことをぐるぐる、ぐるぐると考えてしまう。

30歳になってもなお、この悪いクセ、ネガティブシンキングは攻略できないでいる。

とりあえず、現世には戻ってこられたから、今日はこれで善しとしよう。

束の間のポジティブシンキング。深呼吸を一回して、再び、まな板の上の大根に目を向ける。

この大根で、簡単にできるレシピを考案しよう。

大根のビタミン、カリウム、食物繊維が、肥満や高血圧に一役買ってくれるかもしれないから、毎日食べられるような簡単なレシピにして、お母さんにも伝えよう。

大根は、消化酵素の関係で、生のまま食べるのが良いって聞いたから、火を使わない方法で調理することにして。

生のままなら大根おろし…？いや、家にはおろし金はないし。

そうだ！それなら、包丁を使ってある程度細かくしよう。ある程度のサイズなら、噛むことになるから身体にも良いし、噛まないで飲み込んじゃうより絶対に良い。

皮も葉っぱの部分も綺麗だし、無駄なく、全部使ってみよう。

まず、１㎝の輪切りにして、それから、輪切りにした大根を何枚か重ねて、格子状に包丁を入れていく。大体１㎝角の正方形がいくつも出来たらこれで完成。このとき、葉っぱの部分も細かく切って、大根と一緒にしておく。あとは、飾りつけをして、おしまい。

～♪～

いつの間にか鼻歌を歌っていた。

こんなのレシピなんて言えないけど、名もない料理にはなるかな。

冷蔵庫から、納豆、めかぶ、とろろのパックをそれぞれ取り出す。

小鉢に、先ほど切った大根の子どもたちを半分程度に入れ、その上にめかぶ（好みの量）を乗せ、更にその上に納豆（パック半分）を乗せる。

同じように、小鉢半分程度に入れた大根の上に、今度はとろろ（好みの量）を乗せ、その上に、半分残していた納豆を乗せる。

味付けは、醤油や梅酢、鰹節などでいただく。

これ、白米の上に乗せたり、混ぜ込んだりしたら、「カテ飯」ってやつになるんじゃないかな？味付きだから、普通に食べられそう。

大根でかさ増しした分、白米を減らして。エネルギー的には、ご飯も極端に減らすのは良くないみたいだけど、お母さん、３食ご飯食べてるみたいだし。

さっそく、母とのLINEの画面を開き、吹き出しを入れてみる。

「高血糖・高血圧対策で、ご飯の前には必ず食べてね」

追加で、小鉢に盛った大根サラダ２種の写真を添付。

「子の心、親知らずなんだから」

そう呟くも、内心、ほっとしていた聡子だった。

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聡子の日常を言葉で紡ぐ物語。お楽しみいただけましたか？

日常の欠片を、ひとつひとつ拾っても、分からないこと。

ただ、そのひとつひとつを追っていくと、分かること。

そんなものを、この画面上に、ゆっくりと、すこしずつ、おおきく描いていきたいと思います。