入学前の説明会③
「そんでネアリはいつまで立ちっぱなしなの〜?とりあえず人が通るかもしれないから座りなよ」
「えっあっそうね」
シンに指摘されとりあえず座る。座って周りを見渡すと割と人が集まってきていた。
「シンはなんでこの学校に?」
「ん〜とね、なんでかって言うと俺が次男坊だからだよ」
「どう言うこと?」
「次男坊は家が継げないでしょ?だけど家のために何かしたい、ならば役所で働いて我が家が損しないようにしたいなぁって」
「お国のために働こうって意志はないのね……」
「いやいやいや!そういうことじゃないさ。我が家が得するというのは経済が回るということに等しいんだよ。経済が回るというのはこの国のためになるだろ?」
「そうなのかな…」
やはりシンの言う事は信用できないがするが、私のように志が高くない人間が存在してくれていることに少し安心感を覚える。
「ネアリ、始まるよ」
もうそろそろ説明会が始まるようだ。
「本日説明会を担当させていただくサイラ・イェシオという。よろしく。立場で言えば教頭にあたる」
サイラ先生は白髪のイケオジという部類に入るだろうという感じの先生だった。喋り方からもわかるように厳しそうだ。
「この説明会では」
「えへんえへん!この僕がここの学長であるアトル・ミンターだ!気軽にアトル学長と呼ぶがいい!」
ちっこい少年のような風貌の人がサイラ先生の話を遮りながら急に舞台上に出てきた。どうやら学長らしい。とても癖が強い。
「学長!説明会は私が担当すると言いましたよね!」
「うむ!それがどうしたのだ?僕が来ても別に構わないだろう!サイラの仕事を奪うわけではないからな!!はっはっは!!!」
「私の仕事が増えるから嫌なんですよ!早くご自分の部屋にお戻りください!」
「え〜!もう少し新入生の顔を見て回りたい!!」
そう言った学長は、新入生の周りをひょいひょい飛びながら新入生の顔を確認していった。
「そこの君と隣の君!不思議なものを感じる!!名前を教えてくれないか?」
……私の目の前で学長がそう叫んだ。いや、流石に私ではないだろう。
「ほら、名前。ほら」
学長はにっこりと笑みを浮かべながら私とシンを見ている。
……喋りかけられているの私では?
私のまわりで何が起きてるの!?私はこの国で平凡に暮らしたいだけなのに! 露松名留 @TuyumatuNaru
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