おまえのことなんて忘れたい
ゆれあ
第1話
4月11日、私と彼にとってどうでも良い1日になるはずだった。
人間はイベントを好む傾向がある。例えば、クリスマス。イエス・キリストが生まれた日であって日本では関係のない人が多いはずなのに、ケーキやチキンがわんさか売れる。
私、東山圭はさっきから話しているように行事は好きでは無い。そして4月は進学、進級シーズンで世間は騒いでいる。なにかイベントが無いと人間は生きていけないのだろうか。かくいう私も人間である。そして、女である。名前の読み上、男と勘違いされることも多いがれっきとした女である。そして、今日私にとってはトップクラスでどうでもいい日である、クラス替えの日、言わば高校2年生になって初めての始業式である。
「圭!私、次のクラス圭と一緒じゃなかったらヤバいって!ぼっち確定だよ!!泣くよ?!」
やけに朝から元気なのは友達の彩芽。良い奴である。良い奴だが、私が本音で彩芽と話しているというと嘘になる。
「だぁーいじょぶだって〜〜」
昔から培ってきたコミュ力で彩芽を不快にさせないようにおだてておく。
「てか、彩芽は私よりも一緒になりたい人いるんじゃないの〜??」
「え、バレたァ〜!?」
少し恥ずかしそうにいう彩芽を見ると私自身何故こんなにひねくれているのかと虚しくなってくる。
「ほら、あの男の子。名前なんて言うんだっけあいつ」
「ちょっ!?まだ、覚えてないの〜?壮馬くんだよ!壮馬くん!!学年1イケメンじゃない!?」
学年1とかそうゆうの死ぬほどわからん。どれも同じ顔だろ。あ、いけない、いけない……
「ほぇー、同じクラスなれるといいね、願っとくわー」
「私も圭に今年こそ彼氏ができるように願ってるわ!!圭に彼氏出来たらバーゲンダッツ奢ってあげるからさ!」
「バーゲンダッツは欲しいけど、今年も特に彼氏候補も好きな子も今んとこ居ないんで普通にハーゲンダッツ欲しいわ」
「ダメだわ!」
なーんて冗談をかまして笑っていたが、結構深刻な問題だと考えていた。私、東山圭は16年間恋をしたことが無い。興味がなかったと言えば嘘になるが、自分以外のことに目を向ける余裕がなかった。幼稚園の時はまず友達が少なすぎてもはや好きな人なんか作る余裕もなく、小学生の時は、新体操にどハマりしずっと練習していたせいで他の事には目もくれず、中学生の時はなぜか女の子の方にモテててしまい、自分が恋愛するというのが本格的に想像出来なくなっているのである。「今年こそ!好きな人くらい……」と去年までは思っていたが今は特に何も思わない。彩芽と一緒のクラスだったら嬉しいと感じるだろうが、それ以外は特に何も求めてない。だからこそ、クラス替えはどうでもいいのである。
「おし!紙張り出されたよ!圭!!」
テンションがいつもに増して高めな彩芽を横目で見ながら私は散ってしまった葉桜を見て一人、これから起こる最悪な出来事に対して何も考えずにひょうひょうと過ごしていた。
おまえのことなんて忘れたい ゆれあ @yuria1003
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