第4話

 わたしの名は、フランシーヌ・フォン・ファリナセア。

 ファリナセア子爵家の娘で、魔王討伐のために編成された冒険者パーティーのメンバーでもあるの。


 先月、戦勝パーティーでおかしな事件が起こったんだよね。

 リリィという令嬢が現れてあいさつした人たちが、急に人が変わったようになったり、突然リリィさんを褒めたたえたりし始めたの。


 パーティーメンバーのガルデスさん、アレス王子、クロエちゃんも被害にあったわ。

 話を聞いてみると、頭の中に霧がかかった様になって、普段の自分では絶対にしないような言動をしてしまったんだそう。

 わたしも、その感覚には心当たりがあるわ。ガルデスさん達が元に戻ったあと、よく思い出せないけどフィアが何かをしていたような気がする。そしてその後、わたしの頭の中の霧が晴れたような気分になったの。


 あの場にいた貴族の方達は同じようなことを言っていて、国王陛下も問題視してたみたい。


 だけど、何が起こったのか分からないまま。

 原因に関係しているかもしれないリリィさんに王室の捜査官が話を聞いたみたいなんだけど、リリィさんは訳の分からない事を喚きちらすだけで捜査官もお手上げだとか。


 リリィさんのほかにもう一人、原因が分かるかもしれない人がいるんだけど――


「フィア……」


 わたしは、1か月の間ずっと眠ったままのフィアを見つめる。


 そう、あの事件からひと月、フィアはずっと眠ったまま。

 お医者様が言うには、特にどこかが悪いわけではないけど、フィアが目覚めることを拒否しているのだとか。


「フィア……フィアの笑顔が見たいよ……」


 つぶやくけど、答える声はない。


 いつからだろう、ずっと頭の中に霧がかかっていたような感じがあって、今になるとどうしてあんな事をしたんだろうと思う事が過去に何度もあったの。思い出せない事も、いくつかあるわ。


 だけど


 だけど、一番大切なことは覚えている。


 わたしがフィアを大好きだって事はちゃんと覚えている。


「わたしを置いて行かないでよ……」


 だから、わたしはフィアを目覚めさせる方法を探すために旅に出ることにしたの。

 ガルデスさん、アレス王子、クロエちゃんも協力してくれるって言ってたよ。


 わたしは、ぜったいにフィアの笑顔を取り戻すの。


 そう決意した時、わたしは新たなスキルを授かった。

 いろいろと旅に便利な機能のあるスキル。


 いってきます、という気持ちを込めて、そのスキルの名前を呼ぶ。


「ステータスオープン」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

RPG世界へTS転生した俺が悪役令嬢で、乙女ゲー主人公が世界を浸食してくる 蘭駆ひろまさ @rakunou

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ