『ヒーロー・チェーン』。
心から愛した人がいると浮かび上がる首の痣。
愛した人の命を奪いに襲い来るモンスターから守るため、自らの命を捨ててヒーローとならなければならない。
そしてその痣は無秩序に連鎖していく、という都市伝説を巡る群像劇。
親子、兄弟、恋人……様々な愛が語られ、守るべきは自分の命か最愛の人かを選ばされる人間たちの思いが臨場感を持って描かれています。
どこか悲哀を伴った各章の主人公たちの人生を眺めながらも、愛か命の選択を迫られるシーンはこちらもドキリとしてしまいます。
自分ならば、果たしてどのような道を選択するのか……。
各章ごとに主人公とテーマが変わる群像劇で、色んな切り口で愛の物語を読むことができます。
心の機微や人間の人生を描くことが巧い作者様であり、毎話「この人はどうなるんだろう?」と気になって読み進めてしまいます。
本編の他、描かれなかった「もしも」の未来が収録されたEx章もあり、読みごたえもあります。
愛した人がいるならば、鏡を見るときには首筋の痣が無いかご確認をお忘れなく。
都市伝説としてまことしやかに囁かれている『ヒーロー・チェーン』を題材に取り扱った作品です。
人と人との関わり合い、想いがテーマとなっている連作短編です。
連作短編なので章タイトルで気になったところから読むのもいいのではないでしょうか。
この作品の特徴的なところは、選択肢が登場してくるところです。
必ずしも読者の思うような選択肢が選ばれるわけではないの(元はノベルゲームだったものを長編に落とし込んでいる、というこの作品の出自から来るもの)ですが、EX.として別の選択肢を選んだ場合のシナリオ分岐も記載されているので「あのときこっちだったら」が読めるのが親切設計ですね。
個人的には最後の兄弟のエピソードが「そう来るかぁ!」となりました。なるほどね。