ワンデリングス 鬼の首 2

菜月 夕

第1話

#ゆるふわ漂流記第六話


 俺たち居残り組は先行組が拉致されるを森陰から息を潜めて眺めていた。

「あれって、宇宙人だよね。もしかしたらキャトルシュミレーション?

 あの人たち解剖されるんじゃ」

「うん、なんとかここにいるメンバーだけで救出しよう!」

 しかし、俺たちは遭難者で武器なんて何ももっていない。

「あ、救命ボートに遭難救助信号灯があったよね。あれをあるたけ投げ入れて煙に紛れて襲撃したら?」

 俺たちはより煙が出やすい様に信号灯に木の皮等を巻き付けて発火させて投げ込んだ。

 半分土に埋まって故障しているらしい宇宙船らしきものの中から投げ入れた信号灯が盛んに煙を上げて開きっぱなしの入り口から狼狽える異形の宇宙人が出てくる。

 俺たちは救命ボートをばらして作ったた幕をそいつらに被せる。

 一人は別行動で捕らえられた人たちの小屋を解放した。

 これで人数も優勢だ。

「え? こいつらも遭難者??

 でも助けを呼んだって、どうやって?」

 なんでもこいつらの生体テレパシーの増幅に使われたらしい。

 その時、大空を埋め渡すほどの巨大宇宙船が現れた。

 俺たちがあっけにとらわれている隙に宇宙人たちは逃げ出し、宇宙船の昇降ビームに飛び乗って去って行った。

「コンナキケンナホシ ニドトクルモンカ」

 そして巨大宇宙船は去り、その巨大宇宙船を探知してやって来た救助隊に我々は救われたのであった。

「宇宙船? 俺たちは何も知らない」

 地球にもう二度と宇宙人が来ないのが俺たちのせいだなんてとても言えない。

 俺たちはしばらくの間、宇宙人に攫われて記憶を操作された遭難者として騒がれたが、それもそのうちに忘れ去られた。

 でも、彼らに持っていかれたパソコンにはアニメのデータが大量に入っていたのだが、それはどうなったのか誰も知らない。宇宙人たちがアニメオタクになっている事など俺たちには知る由もなかったのである。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

ワンデリングス 鬼の首 2 菜月 夕 @kaicho_oba

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る