第57話リトルシア
「あ、おじさん…失礼しています!」
リリアンナは慌てて立ち上がり、頭を下げる。
ルートはそんなリリアンナを見て、罵倒するでもなく、ふん…と小さく鼻を鳴らしたかと思えば後ろの人物に声をかけた。
「すみません、今日は私の息子の友人が泊まりにくることを忘れていました」
「いえ、こちらこそ突然の訪問になりましたから…全く気にしていませんよ、立てるかしら?」
そう言ってリリアンナの前で手を差し伸べたのは美しい女性だった。
淡い水色の長く綺麗な髪にまるで宝石を嵌め込んだかの様な桃色の瞳。
リリアンナは一瞬その女性に見蕩れたが、ハッとして慌ててその女性の手を取り立ち上がる。
「す、すみません!ありがとうございます!」
リリアンナがまた頭を下げると美しい女性はふふ、と小さく笑うとどういたしましてと返した。
「可愛らしい子ね、貴女のお名前は?」
「あ、えと、リリアンナ・フローテです!」
「リリアンナちゃん…何処かで聞いた事ある様な…」
そう考え込む素振りをみせた後、女性はハッとしてリリアンナに笑顔を向ける。
「私の自己紹介がまだだったわね、はじめまして、私はメリル・リトルシアといいます」
「リトルシア…?」
声を出したのはルイだった。するとルートが厳しい目をルイに向ける。
「ルイ!失礼だぞ!この方…メリル・リトルシア様は私の大事な取引相手だ、ちゃんと敬称をつけなさい」
ルートの言葉にルイは小さくすみません…と謝罪する。
「貴方がルイ君?わぁ、とっても綺麗!顔立ちはマリスさんに似ているわね」
メリルがそう言ってルイの頬に触れる。
ルイは一瞬身構えたかと思うと少し顔色が悪くなる。
「ルイ…?」
「それよりもぉ、メリルさんはどうして此処に来たのぉ?」
リリアンナが不思議そうにルイを見つめる隣でアンジェがそう訊く。するとメリルはまた優しい笑顔で応えた。
「ファリスさん…ルートさんが新しい魔法具を発明したと聞いて、どういう魔法具なのか見に来たのよ…書庫に来たのは興味から、かしら」
そう言うメリルはルイの頬から手を離した。
ルイも心做しか顔色が戻った気がする。
「それじゃあ私達はこれからまたお話を…あら?」
不意にメリルが遠くを見つめる。それにつられてリリアンナも其方に目を向けると茶髪の端正な顔立ちをした少年が本を片手に此方へ向かっていた。
「ジャック!いままで何処にいたの?」
ジャックを見かけて思わずリリアンナの声が弾む。ジャックは紅い瞳にリリアンナを写すと無表情のまま応えた。
「書庫の奥に扉があったからそこにいた。色々な本が置いてあって長居しちゃってたんだ」
そう言ってジャックは手に持っている本をひらひらさせながらみせてみた。
内容は魔法について書かれている本だということは背表紙の「簡単に使える魔法」というタイトルからわかった。
「…あらあら」
メリルはまた柔らかい笑顔をしたと思ったらジャックに近寄る。ジャックはそんなメリルを不思議そうに見つめた。
「貴方、とっても綺麗ね…まるでお人形さんみたい」
そう言うや否やメリルはルイにした様にジャックの頬に手を添える。
そして周りが驚く発言を次にした。
「貴方、リトルシアの小間使いにならない?」
ジャンク・マジック ちまねちよ @tomorshyu
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