あとがき

 このたびは、拙作「おこそずきんちゃん ~たまいとつむぎの怪~」をお読みいただき、誠にありがとうございます。この物語は、昨年5月ごろからTwitterで描き始めた「おこそずきんちゃんとマタギくん(仮題)」というイラスト・漫画のシリーズを小説化したものです。


 「童話の『赤ずきんちゃん』を和風化したら面白いんじゃないか」という本当に些細な思いつきから始まったシリーズで、「だったら猟師はマタギに、赤ずきんは御高祖頭巾に、狼は日本では火伏せの神としてのイメージがあるから炎の能力を与えて……」とあれこれ考えている内に、いつの間にかキャラクターが増えていき、書きたい世界が広がっていきました。また、マタギ文化についての勉強を進めて行くうちに、その奥深い世界に魅了されていったのもあり、いつしかこの物語を長編小説として書きたいと思うようになりました。


 しかし、今までにも色々な物語の構想を練りながら、なかなか完成させるところまで行きつけないのが私の悪い所だったので、まずは自分で決めた期限までに完成させるトレーニングをしたいと思いました。また、伝統文化を伝えるとか、社会へのメッセージをこめるとかいう以前に、まずは一つのエンタメ小説としてどれくらい面白いものが書けるのか、自分の力を試したいという気持ちもありました。

 そこで、今回読み切り短編として書き上げたのがこの「たまいとつむぎの怪」です。あとで長編本編を書くという前提で仕上げたものなので、多くの部分―――例えば「お月ちゃんって結局何者?」とか「火噛ホノガミ、お前いったい何なんだ」とかは謎のままにしてあります。もし、この物語を読んで人物やストーリーに少しでも魅力を感じていただけたなら、今後の「おこそずきんちゃん」シリーズの展開にぜひ注目していただきたいと思います。


 内容については、ここで何を語っても蛇足にしかならないと感じたため敢えて触れずにおこうとは思うのですが、ひとつだけ。今回は「ある一匹の、理を越えて長く長く生きてしまった蚕の主観」を軸に、フィクションとしてこの物語を書きましたが、現実の蚕という種や、養蚕という産業、それに携わる人々に対して、ネガティブな印象を与えようという意図は一切ないことをここに申し添えておきたいと思います。この話を書くにあたって、イメージを膨らませるために、文字資料だけでなく映像資料なども色々と見てみたのですが、もともと昆虫があまり得意でない私でさえ、気づいたら口から「かわいい」という言葉をこぼしていたほど、蚕は魅力的な生き物だと思います。養蚕に携わる人々の言葉からも、蚕に対する愛情や伝統産業に携わることへの誇りが感じられました。

 もし読者の皆様にマイナスのイメージだけを与えてしまったとしたら、それはひとえに私の文章力の低さによるものです。深くお詫び申し上げます。


 もしご感想や、ご意見等あれば、コメント等をいただけると大変励みになります。拙い所も多々あったかとは思うので、厳しいご意見も自分なりに真摯に受け止めたいと思います。

 それでは、最後までお付き合いいただき、ありがとうございました。


2023年1月3日 とまこ

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たまいとつむぎの怪 ー【読切版】おこそずきんちゃんー  伽藍 朱 @akinokonasu

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