第27話  ルート分岐If 決着②

「警察……?」


 ヒナタは俺の言った言葉を反芻した。


「それって私が付きまとってくるって言って警察に引きはがしてもらうってこと?」

「ああ」

「……そこまで警察がしてくれるの?警察は冷たいって聞いたことあるけど……」


 なんでそこで意外と冷静なんだよ……。面倒くさいな……、どうするか……と考えていると、もどかしくなったのか一旦会話から離れていた瀬川さんが再び割り込んできた。


「まだ、ごにょごにょ言うんですね。じゃあ、聞かせてもらいますよ岩崎さん。もしもあなたが今の洋介くんの立場だったらどうなんですか?」

「……それはどういう意味でですか?」

「そのままですよ。あなたがしたことをそっくりそのまま洋介くんにされると思ってください。浮気現場を見せつけられて辛いところで、もう一度現実を見せつけられ、その後追い討ちをかけるように冤罪を擦りつけられて、それで俺は悪くないんだとかごにょごにょ言われた後に洋介くんにやり直したいと言われてあなたは許してやり直せるんですか?」

「……」

「過去の清算とかが可能なんですか?あなたは裏切られたあとにまた信頼できますか?間違いなく疑心暗鬼に陥るはずですよ。大切な人に裏切られるというのは反動の振れ幅も大きいんです」

「……」


 何を言っても黙りこくったままのヒナタにさぞ名案を思い付いた風に瀬川さんは言った。


「じゃあ、岩崎さん実際にされてみますか?そうすれば洋介くんの気持ちも分か」

「嫌!」


 彼女は堪えきれなくなったのか瀬川さんの声を遮るように甲高い声を上げた。


「そんなの嫌!」

「……それならもう分かりますよね……。あなたのやった行動の意味が。あなたは分かったつもりでいただけなんです。自分からだけ見て満足して冷静に相手の立場に立って振り返ったりしなかったんですよ」

「……」


 彼女は黙りこくってしまった。前回とは異なり、瀬川さんに自分の犯したことを綺麗に突き付けられて、それを自分で完全に理解してしまった。足掻こうにも足掻けば足掻くほど事態は悪化する。そこまでおそらく分かってしまったのだろう。だからここで今、沼にハマり止まってしまった車のようなヒナタに俺は俺の手でとどめを刺す。


「……ヒナタ、そういうことなんだ。だから理解してくれたなら、——今度こそもう俺に関わらないでくれ」


 チェックメイト。

 ヒナタは何も言わずに泣きながら一人でこの場を出て行った。理解してくれたとみなしていいのだろうか。


 ヒナタがいなくなっても啓汰は見送るだけで追いかけたりせず、その場に留まっていた。

 別れるって本当だったのか……と俺が思っていると啓汰が俺に問いを投げかけてきた。


「……なぁ、洋介。最後に教えてくれ……。俺は一体どうするべきなんだ?これから」

「……」


 知らねぇよ、そんなの。

 俺の内心を知ってか知らずにかは分からないが啓汰は独り言を吐き続ける。


「本当に馬鹿だよな俺。全部中途半端だしさ。日向に対して今も昔も何をするのが正解だったのかも分からない。それに、洋介に対しても」

「……おい、いい加減にしろよ」


 亮が突然怒気をはらんだ声を出した。


「グダグダ言ってるけどよ。お前、それ全部自分が招いたことなんだからな」

「……それは分かって」

「いや、分かってない。それならそれをわざわざ本人の前で言うか?お前がやったことは報復として殺されても文句は言えないことだぞ」


 まぁ、殺したら罪には問われちゃうけどなと亮は付け加えた。


「……」

「された側の本人が一番苦しいんだ。まぁ、表情にもどこにも今は出してないけどな」


 その亮の言葉で俺は今の俺が恐ろしいほど無感情に近いことに気付いた。ああ、そういえば確かに前みたいに苦しくはないな……。


「今すぐ洋介の前から姿を消したほうがいいぞ。というかとっとといなくなってくれ」

「ああ、そうだな……。ただ、最後にこれだけ言わせてくれ。軽いといわれても仕方ないけどこれしかないんだ。——すまなかった……」

「……」


 こうしてヒナタと啓汰の二人は俺の前から姿を消した……。




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あと、Ifルート本当に必要?需要あるのか?というコメントに対して。答えは僕には分からないとしか言いようがないですね……。長編版描くときの参考になったり書いてて楽しい……くらいなので。

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