第26話  ルート分岐If 決着①

 ヒナタが二度も大学に襲来した日の翌日の朝、今日もまた来るかもなと思い、俺はあまり行きたくなかったが、行かなかったらそれもそれで負けな気がしたので重い腰をあげて大学に向かった。


 俺の嫌な予感は外れることなく、俺が大学に行くと彼らは二人揃って現れた。それを見て、俺は思わずしかめっ面を浮かべてしまった。


「洋介」

「……」


 その俺の顔を見ても啓汰は俺に声をかけてきた。俺は正直もう話すのも嫌なので黙ったままただただ見つめるにとどめた。


「洋介。俺さ、日向と別れることにしたんだ……」


 そんな俺の態度も気にせずに啓汰は淡々と俺にそう告げた。そうか。随分といきなりだな。でも、だからどうした?


「洋介、そして教室中の皆様方、どうもご迷惑をお掛け致しました。申し訳ありませんでした」

「……」


 教室にいた人たちは彼ら二人を少し冷ややかな目で見つめるだけで何も言わない。啓汰に便乗するようにヒナタも口を開いた。


「私からも。洋介くん、そしてそのほかの皆様も、ごめんなさい。今まで好き勝手なこと、私は悪くないとか知らないとか見苦しいこと、他にもありもしないこととかを言ってごめんなさい。……洋介くん、今までの行動、浮気とか諸々全てを謝罪しさせてください。……もう一度しっかり話し合ってやり直したい。だからお願いします。私と別れることを考え直してください」

「……」


 突っこみどころが多々見受けられるが、そもそも一体どういう心境の変化があったんだ……?


「急にどうしたんですか?岩崎さん。昨日とは大変な変わりようですが……」


  俺の内心を的確に、割り込むような形ではあったが瀬川さんが代弁してくれた。


「こうでもしないと洋介くんとはやり直せないってことに気付かされたからですね……」

「……随分と身勝手ですね。結局、理解していないんじゃないんですか?あなたの行動がどれだけ洋介くんを苦しめたのか」

「……じゃあ、私はどうすればいいんですか?何をどうすればいいんですか?」

「洋介くんをこれ以上傷付けない様に大人しく退くのが一番いいんじゃないですかね」


 突き放すように告げられた言葉にヒナタは少し憤った。


「それじゃあ、意味がないじゃないですか!」

「なめてるんですか?」

「!」

 

 突然、今まで呆れたような口調だった瀬川さんの声が吹雪を帯びた。ヒナタはその声に体をビクリと震わせた。


「意味がある、意味がないんじゃないんです。謝罪をしようが何をしようが罪が消えることはないんです。あなたの大切な人が殺されて刑務所に犯人の方が入られたとでもしましょう。そこで罪を償ったからといって出所してきた方をあなたは許せるんですか?」

「……」

「あなたは犯した罪を謝罪しただけなんですよ。それで罪を償うこともなく元の関係に戻りたい?冗談じゃないですよ」

「……でもそれはあくまでも、瀬川さんの思われていることですよね……。洋介くんがどうかだなんて……」

「そういうところも分かっていないんですよ……」


 俺を瀬川さんとヒナタは見てくる。最後まで言わなくちゃいけないのか……。


 自分のケツを拭くくらいは自分でやらなくちゃだよな……。


 俺はそう自分を鼓舞しヒナタを見つめる。不安そうな瞳に残っている最後の光、希望という名の灯を俺は——消す。


「俺の思いは何があろうともう変わらない。終わったものは戻らないって前も言ったよな。これが俺の答えだ。……もしこれ以上俺に関わってくるなら大袈裟かもしれないけど警察沙汰にする」


 正直、おそらく警察沙汰にするといっても警察には何もしてもらえない気はする。ただ、これは脅しとしては——。




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