第25話  ルート分岐If 再認識と前進と【ヒナタ視点】&【啓汰視点】

 洋介くんにキライと言われてショック状態になっていた私は気付いたときにはいつの間にか再び啓汰の家の前にいた。


 家に入ると私はフラフラと啓汰の下に近付いた。すると、突然目を閉じていた啓汰が目を開けると同時に口を開いた。


「洋介とは……どうなった?」


 そう訊かれた私があったことをありのままに話したあとに酷いと思わない?と同意を求めたが啓汰はそうか……と呟いただけでそれ以上は何も言わずに、何やら再び悩み出した。


 しばらくお互いに何も声を出さない気まずい沈黙の時間が流れた。私もなんとなく彼に甘える空気ではないのを察して、近くに座るに止めていた。しばらくすると、悩んでいた啓汰が意を決したように口を開いた。


「日向、一つ訊いてもいいか?……日向にとっての洋介って、……いったい何なんだ?」

「……私にとって洋介くんが何か……?洋介くんは私の大切な人……で私の隣にいて欲しい人」


 私が思ったままに言った言葉を聞くと啓汰は自分を嘲笑うような、それでいて少し辛そうな顔を浮かべた。


「……じゃあ、もう一つ訊かせてくれ。……俺はいったい君にとって、君の……何なんだ?」

「……」


 私は思わず黙りこくってしまった。啓汰が私にとって何か?答えること自体は出来た。ただ、それは——。


 私が何かを言う前に彼は何かを結論付けたのか、それとも私の口から聞きたくなかったのかどちらなのかは分からないが、続きを話し出した。


「もう遅いかもしれないけど……、そろそろこの関係はやめるべきなんじゃないか……?日向は洋介の下に戻りたいんだろ……。それなら、俺と一緒にいる時点で日向が洋介の隣にいる瀬川さんを見て嫌だなって思ったのと同じで、洋介に永遠に受け入れてもらえないだろうし……」

「……」


 そう言われると彼の話は至極尤もらしく私には聞こえた。いや、正しくはそんなことは分かっていたのだ。それを行動しなかっただけで。言い方が悪いが、洋介くんの代わりとして啓汰を重ねていたから。


「話を聞いた限り、日向にも反省点があって、それについて振り返れてない気がするから……、それ次第では……」

「……反省点?」

「ああ。別に日向を罪を押し付けようとするわけじゃない……。ただ、何個か言わせてくれ……」


 啓汰はそこで一旦区切った。


「最初に、俺に洋介が構ってくれないとか話す前にちゃんと日向は自分の思いを伝えたのか?寂しいからどうしてほしいとか」

「……」

「それ以外にもさ、体の関係を持つっていうのはやっぱり特別なんだよ……。人間なら誰でも。乗った俺も俺だけど誘うっていうのは一線を越えすぎてるんだよ……。それとなんで今日の朝わざわざ洋介を貶めに行った?」

「……」

「こう言ったら悪いけどさ……、日向は責任を他人に擦り付けて現実逃避をしがちで、若干罪の意識が欠落してる気がするんだよ……。少なくとも申し訳なさの表明というかなんというか謝罪をするくらいはするとかあったんじゃないか?」

「……そうだ……ね」


 私はそうとしか答えられなかった。


「……明日けりを付けよう。お互いに、大学で」


 啓汰のその言葉に先程の啓汰の言葉を思い返しながら静かに頷いた……。




ー啓汰視点ー



 日向から責められた。更に洋介のところに行くと言って家を飛び出して行った。俺は日向の考えが分かってしまい、その事実が薔薇のとげとして俺を刺してくる。


 俺は洋介の代わりでしかない。前までならそれでも良かったのかもしれない。ただ、あそこまで俺のせい俺のせいと言われて、実際に俺にも悪い点はあったがそれでも少し嫌だったのと、最後まで言わせはしなかったが俺と洋介のどっちが大事なのか訊いたときの日向の態度で俺の決意は固まった。


 俺はこの関係を、日向とのよくわからないこの関係を終わらせる。


 洋介と日向が復縁するにせよしないにせよこの状況は双方に失礼でもあるし、幸せを祈るうえで退くべきだ。そして何よりも自分が招いたことではあるが、俺はもう疲れたのだ……。


 これがおそらく——最後になるだろう。


 明日、決着をつける。




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