イルミネーション炎

白川津 中々

「クリスマス!」


「死ねクロース!」


叫びをあげて夜の街を破壊する集団は鎧具足を身に付けていた。一同手には六尺の大身槍。ファランクスが如き重厚な陣はことごとくネオンを砕き夜から闇を取り戻していった。


「なにがクリスマスじゃ!」


「死すべし浮かれポンチども!」


絶叫、悲鳴。

武者行軍の前になす術なく退散するカップルども。二人のクリスマスは今宵トラウマと変わり未来永劫癒えぬ傷となる。



「火を灯せ!」


「憎しみの炎じゃ!」



街が焼かれ、店が焼かれ、人が焼かれて闇照らす、再びの輝きは炎。人工由来のケミカルライトは潰え、煉獄のイルミネーションが灯された。鎧は赤光を纏い煌々。灼熱の海から突き出た穂崎が揺めき大気を攪拌していく。


「燃えよ炎!」


「燃やせよ全て!」


「メリークリスマス!」


「メリークリスマス!」



今宵はクリスマス。

メリークリスマス。


街よ燃えろ。カップルよ燃えろ。全て燃やして灰になれ。メリークリスマス。あぁ、メリークリスマス。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

イルミネーション炎 白川津 中々 @taka1212384

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ