第6話『冷たい炭の谷』

目の前に炭と灰しか景色だったイボクに命の恩人のニーマさんが言ってたことは未だ頭の中に響いている。


「生きることを諦めるな!」って


イボクはそれをこの世に生きてから承知の上の常識だった。何があっても、何が起きようと、地獄だろうとなんだろうと、生きるだけは簡単に諦めるものじゃない。生きることに諦められなかったからイボクは盗人になってた。たくさんいたずらして、たくさん怒られた。


一度も、生きることは諦めなかったのだ。


だけど、イボクが今眺めた景色は諦めないことと程遠いものだ。絶望的だった。


ほんのちょっと前、この炭山は活気のある紫色に彩る素晴らしき村だった。


まあ、たとえこの村がイボクを酷く扱ったけど、今となっては石ころに投げられたのも懐かしく感じる。


この道路、かつて商店街が繁華する道だ。この道はイボクがいつも食べ物を得たところだ。そして、食べ物を得るたびにこの商店街の人たちと追いかけっこした。その途中で、並べた樽をぶっ壊したりする。


今度はこの炭と化した建物だ。ここでは村中のみんなが集まって、配られた牛乳を手にいる。


配布所とも言う。


この配布所でイボクの思い出は人に蹴られたことがあった。その人は思いの中でイボクのような成長しないちびっこに与えられる聖水なんていないと、聖なる水を無駄にするだけと言ってた。


けど、豊かな村だけあって、不公平な牛乳配布はあってはならない。ゆえで配布の職人たちはさっさとイボクに牛乳を渡し、同じ揉め事が起きないように早めにイボクを追い払っていた。


そして、今イボクが立っていたこの炭山はかつての帰ったことがない家だ。


この家には二人だけの住人がある。イボク自身と一人だけ残っていた家族のじいちゃんだ。


だけど、たとえ二人がこの家に住んでいても、イボクは一人しかこの家に住んでいた。


じいちゃんは本当に身勝手なじいちゃんだった。この家では二人しか住んでいなかったから、イボクは料理の技術を身に着けていないから、厨房を使うのは村長一人だった。


だけど、料理を作るたびに村長はイボクの分を作ったことがなかった。一人で調理して、一人で食べる。


このときのイボクはまだ生身の食べ物を口があまり馴染んでいないから、一人で調理しようとしている。


ある日、イボクは厨房を爆破させることがある。むやみに焚きを入れて、お陰で火が爆発物に触って、一瞬厨房はぽかぁんだ。


けど、それを知った村長はイボクに一言も言わず、煤だらけのその厨房はを平気で直している。他のみんなに手伝いを探して、ただ、イボクに一つ声をかけられたことがなかった。


他人扱いが過ぎるその家ではもう生きられないと思い、家から脱走した。


それらはすべて活気のある思い出だった。


今じゃあ、シュゥーーと冷たい風だけが吹いている。

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イボクの物語 直江ダイチ @060704

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