第5話『身長・巨人・上雲の世界』

あれは人を形した巨大物だった。換言すれば巨人だ。


この世は身長を煽る世界。身長というものはこの世界においてそれが全てだった。 身長が高いほどの人はそれなりの力にみなぎり、社会ではその分だけの好評も得られる。


身長というのは誰もが憧れているもの。身長を得るために同種、同族、同胞でさえ牙を剥く。みなは競い合い、殺し合っている。


普段、人間に背は伸びる。背によっては顔立ちも変わり、男は髭が生えて、もっと男前が出る。女は胸や臀が大きくなり、もっと女前を出す。いわゆる成長とも呼ぶ。


成長は年が経っているほど成るものだった。年が経つほど成長をし、よって丈も伸ばす。


時間よりも成長する他の方法もある。それは、成長を招く物品アイテムを探し、それを身に使うこと。物品は時に時間よりも人を成長させていく。例えば、人の年齢があまりにも長く経っていると時間一つで成長しにくくなる。その時、成長の阻止を免れるために物品を使用する。


だけど、人間があそこまで大きくなるのは誰でも予想はしていなかった。


あれは本当に人間だったのか?


イボクは読んだ本に人が成長をなりすぎて、いつしか巨人と化している覚えがあった。


その人の幼少期は低身長で皆から絶え間ない屈辱を浴びている。


だけど、その人は往生際の悪い小人で、弱いけど強くなろうとしている。


語れた伝説ではその人はたくさん魔物を倒し、たくさんの大冒険をかけた終えで、成長をする。


どんな魔物を倒すか、どんな大冒険を経てきたか、その本では何も語らなかったが、その人は世界中に名前を轟かせた、誰もが彼の名前を知らない人はいない。そして最後に、その人は奇絶な物品を手に入れた。その物品で彼はくもぐもを貫くまでの身長を増大し、見知らぬ世界へ踏み入る。


でも、今までイボクはそれを伝説にしか思っていなかった。だけど、あんなものを目の当たりにしたら、すこしでも信じるしかなかった。


「この雲の上に人が生きているのか?」

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