第4話『巨大の物』
「ニーマさん?どうしてここに?」と、驚いたイボクは底から安心感を感じて、少し、嬉しかった。ピンチからヒーローに助けられた気分はまさに今のイボクだった。
「話はあとだ!抜けるぞイボク!」手元に握ったイボクをしっかりと握り、両眉をしかめて、最大の集中で転落した破片を躱して、塔から抜けてきた。
落石地獄から抜け出るのは容易な話じゃなかった。
目の前にぶ厚い石が落ちてくる。
でも、躱すのに左から、右からも石で道が塞いでられたから、石と地面のはざまにある細い抜け道へ飛び込んで、ギリギリで抜けてきた。
目の前にぶ厚い石が落ちてくる。
今度は躱すのに左側が抜け道だから、左側に進路を変えて、あえてその逆の右側の抜け道にもそうだった。
目の前に小さな破片が落ちてくる。それらはとても小さくて、背中に背負ったイボクにも影響を及ばないぐらい小さい。そんな道成は突っ走っても大丈夫だろう。
塔からの抜け道が一足で着けるその瞬間、二人の目の前にとても巨大な破片が落ちてくる。
左に抜けても、右に抜けてもすべはない。下からはとても遅すぎた、上に飛んでっても石はデカすぎた。イボクが不安に包まれるその時ーーー、
ギリッと握りこぶしの音が強く聞こえてくる。イボクが気づいたら自分を背負った男は構えを整った。
ひだり拳は平らに掌を開いて、狙いを定めるように見えた。
お数珠で包みあげたみぎ拳はひだり拳より垂直に、定めた狙いを貫けるように見える。
「イボク、ちょっとした刺激だ、耐えられるな?」と、とてもしかめた眉でそう言っていたニーマだった。
「もちろん大丈夫だよ、ニーマさん!」そう答えたイボクだった。
「そっか、じゃあーー」
『
「ドーーーン!」石の砕き音が貫く拳で大きく鳴り上がる。
イボクを助けたニーマはイボクと一緒に上半部を折られた聖なる塔から無事で安全なところに着いていた。
まだ状況をしっかりと把握できず二人は、よもや巨大な聖なる塔をまっぷたつにできるその姿は一体ぃーー。
二人が見据えたものは大きな足を持っているものだ。その足の長さはもう十分巨大である聖なる塔の広さはとても及ぶものとは思えない。その広さでさえ村の一番背の高いニーマが横に並べても、同一人物の十二人ぐらい一緒に並ばなきゃとても及ばない広さだというのに、またはそれを越す目の当たりにした人間の足はいま二人は目の当たりにしている。
壮絶な驚愕だった。
その足を形にした巨大物は足根から生えた肉かたまりのようなものが見えた。
二人は驚きでそれは何なのか見当がつくのは遅かったが、よく見えたら、それは人間の脛だった。
でも、脛だとしたら必ずその上に膝が見える。けど、それは高く伸びるほど、どれだけ上へ見ても、その膝というものは目の当たりにしなかった。
未だ固まった二人は、巨大物が動いていると見えた。上から下へ身体を下ろしているように見えた。
風は強く吹き込んだ。
身体を下ろした。膝を曲げて、突き出された尻も見えてくる。つくばうように見えるその巨大物。
つくばうと、風嵐のように吹き込む強い風が、ニーマの足場を奪うように飛ばしている。
だけど、村の一人の強戦士だけとあって、なんとか足場をなくさずにすんだ。
だけど、それはきっと賢い判断ではなかっただろう。
その後、巨大物は顔を見せて正体をあらわした。
やつは人間だった。老人のように見えて濃いひげ面で、口は見えなかった。
頭は坊主で、顔は丸くて、頬は太い。
ちょっとした真っ赤な顔で、ちょっとした縮れ毛なひげで、その巨大物は喋った。
「ひっ!蟻?」と酒噎せた喉で巨大物は喋っていた。
巨大物がつづくと「ぶわっはははー!また他の蟻だぁー!今日、ちょっと悪い日だからね、死んでもらうぞ蟻ぃ!」
巨大物はまた立ち上がり、足を強く地面に突き込んだ。
真下にある二人は、ニーマはその状況を早く掴み、ギリギリで間にあえるイボクを落ち足の範囲外に投げる。
「ニーマさん!」自分を助けた人へ届けるように手を伸ばした。
だけど、ニーマはもうだめだ、どれだけ間に合わせようと巨大物の落ち足の速さにはとても及ばない。
だけだ、間に合える限りなら、ニーマにイボクに言わせたいことがある。
「イボク!たとえ何があっても、諦めるな!」それが、ニーマの遺言だった。
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