第3話『災い』

ニーマはその悲しむ偉人の後ろ姿を見て、自らは同じく悲しんでいた。まさか、自分が尊敬した人はこんな悲しい悩みを抱えるなんて。


後ろ姿を見せたままその偉人は言った「そろそろけじめをつかなきゃならない。今夜、やつは必ず聖なる塔に現る。その時、お前がわしが言ったようにやれるか?」


「問う必要はありません、村長のご命令であれば、私、ニーマは全力を尽くしてこなします!」


「そっか」


その悲しんだ偉人の後ろ姿にはきっと慎重深く考えたゆえの決断。自分の孫がこんな険しい道を歩ませて、きっと仕方がなかったのだろう。だから、そんな未熟な自分にこの決断を信じるしかない。


そういったニーマは今影の中に潜めながら尊敬した偉人の孫の行く先を見渡す。


ーーーーーー、


塔の中は広い。イボクが百歩歩いててもこの広さにはとても敵わない。でも、どれだけ広さを煽っても、この広場には何もなかった。あるのは端に造られるいくつかの像とその間にある柱ぐらいだった。


そんな平らなこの一層は上に上がる階段が見つける。その階段を登ったらきっと上層につくだろう。


なんとも、拍子抜けな聖なる塔だ。こんな簡単に抜けられるものなら、いくらでも登って、大量の牛乳を取り、この世界で一番背の高い人になれる。


そういう甘ったれな思い込みをしたイボクは、のんびりと口笛しながら階段予報へ歩いていた。


そんなところ、聖なる塔は震えた。全体的に塔は震えた。イボクはその震えに身は揺らいで、足場をなくし、小さなイボクは転んでいた。


グラララと永く続くこの震えはイボクの心を落ち着かせない。


体が震えを感じるたびに災いが近づいていると感じがした。


グララと鳴っている大地はイボクの鳥肌を立たす。胸の鼓動も激しくなる。滴下する冷や汗も一本二本じゃ済まない。


一拍迫るそのイボクの恐怖に迎えるのはーーー、


「むおおおおおぉーーーー!」


その鳴き声は村中の人々の耳に聞こえ、いかにやり逃がそうとこの鳴き声からは逃れられないほどの大きな鳴き声だった。


爆睡の人、いかなる取り込み中をすべて乱す鳴き声だった。


それをこの村の一番高い建物の頂点に置くことで、何らかの聖獣の牛に危機が訪れたら、それをみんなの耳に届けるように。


牛の真下にあるイボクはそな声の迫力に腰を抜かしていた。流石に頑固なイボクでも、自分がやっていたことは間違いだって気づいていた。


「オイラは、あんなものに触れようと思っているのか」瞳はまっすぐ上へ指していながら、全身の震えが止まらなかった。


イボクは転んで固まった。後々と気づいたら、塔の窓から刺す赤い光が見えた。


その光の輝きは延長に光ろうとしない。ただ、それはときに大きく輝いて、また小さく輝いている。


そんな光を見たことがないイボクは全身に感電するようにぞっとした恐怖が首をしめるように、ますます震えが止まらなかった。


「何なんだろう、あれは?」


窓の近くにイボクが来た。


その光の向こうに写していた景色は、人の恐怖の根源そのものが光り輝いた。


その赤い光の向こうには人の叫びと人の涙が交わっている。光が燃え上がり続けるほど、その涙と叫びも大きくなった。


「わぁーー!」


「キャーー!」


その光り輝く赤い光の正体は燃え上がる火炎だ。


その景色にとどまったイボクはまた震えを感じた。だけど、体が固まった以上、それを気づくことはなかった。


「ドン、ドン、ゴドーン!」


目の前の光は急に塞げられた。固まったイボクはまた意識を戻して、急に現れた目のまあに現れた巨大物は一体何なのか確かめようとしている。


「足?」この塔の広さが及ばないほどの足だった。


この足の持ち主を確かめようとして、イボクが上へ見据えるその瞬間ーーー


「ガバーーン!」


急に転落する石がイボクを押しつぶすように続々と落ちてくる。


やがて、イボクの真上に石が落ちてくる。落石に押しつぶされるのは逃れないように逃げ場をなくしているその時、素早く人影がイボクを助けた。


「大丈夫か、イボク?!」


その人影はニーマだった。


「ニーマさん?!」

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