杜撰な殺害計画
月見 夕
あの子は殺さなければならない
「ああ、もういいかな、殺しちゃって」
彼の言葉に、カウンターの店員の顔色がさっと青ざめる。まったくこの人は……こういう話題は場所を選んで欲しい。
「駄目ですよ、もう少し我慢してください」
「いやもういいだろ、俺もう限界だよ」
「彼女が必要だって言ってたじゃないですか。どうしちゃったんですか」
「いや、あの子がいなくてもどうとでもなるなって気が付いちゃってさ。早々にご退場いただくのが俺の務めだろ」
渋る僕に、彼は小さいスプーンでパフェを切り崩しながら言い放った。
「ええ……でも、殺すにしたって、どうやって」
「絞殺が一番手っ取り早いんじゃないか」
「そんな早々に足が付きそうな殺害方法、嫌ですよ。しかも誰にさせる気ですか」
「松尾」
「あの鉄砲玉ですか。絶対バレるやつ!」
「まあ見ててよ。彼に相応しい殺害動機を与えてあげるから」
「うう……まあでも代案もありませんし……試しにそれで行きましょう」
「よし、大枠は決まったな。――君はこの後どうする?」
「まずはそのパフェを食べきってからにしましょう。ほら、店員さん見てますよ」
溜息混じりに立ち上がり、僕は会計に伝票を差し出した。
「領収書お願いします。宛名は――丸井出版で」
杜撰な殺害計画 月見 夕 @tsukimi0518
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます