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【12月23日、スーパー、晴れ】

 今日は、病院に行く日だ。定期的に病院へ行って、薬をもらう。薬は、身体的な症状を治すものと精神的な症状を治すものがある。もらう薬は、精神的な症状の方だ。かれこれ退職して9か月が経つ。今まで経験した仕事は、肉体を使う仕事が多かったけど、病院で調べてもらった結果、合っていなかった。思い返すと、上手くいかないことが多かった気がする。そういう時は、相談して助けてもらえばよかったけど、それも上手くできなくて、自分で何でも解決しようとした。その結果、我慢することが多くなって、溜めこんだものがある時爆発するように溢れ出た。同じ過ちを繰り返さないように、今は見つめ直す時間なのかもしれない。病院から帰り、母は昼寝を始める。パソコンを開けて、小説の続きを書き進める。小説の話は、英雄が出てきて、奇跡を起こす内容だ。英雄は強くて、どんな困難に直面しても負けないで立ち向かう。この小説を書くことで、自分の精神が安定している部分もあると思っている。但し、順調に書き進めなくなると話は変わる。小説の内容は話せないので、誰にも相談することはできない。何とか自力で書き進めるしかない。その点で、今は時間がある。少しずつ書き進めて結末まで到達した。あとは、その結末を終わらせるだけだ。スーパーへ買い物に行く。買い物中の人たちがあちこちで商品を奪い合い出す。母も気にし出す。謎のアイテムを取り出す。アククウカンに移動する。特大のコアクマが両手の武器を投げると同時に跳躍する。同じように跳躍して武器を躱す。“ハンドショット”をコアクマは武器で防ぐ。後ろに下がったところに“ティアドロップ”を放つ。コアクマが消滅してスーパーは元に戻る。リーが現れる。「キミ、強いね。まるで英雄みたいだ。これなら、完全体も敵じゃないかもしれない」夕食を終え、自分の部屋に行く。日記を開ける。『今日は病院に行った。英雄の話が少し進んだ。それから、リーに英雄みたいと言われて少し嬉しかった』日記を閉じる。


【12月24日、居酒屋、雪】

 昨日の夕食のとき、父が明日出張に行く、と言っていた。父の仕事は、賃貸住宅の管理である。担当する物件の入居者や退去者と関わることになる。鍵の紛失から水もれ、害虫駆除まで様々なトラブルの連絡を受ければ解決しに向かう。また、長時間の会議も連日のようにある。ストレスの多い仕事である。日々の業務に追われる中で、突然出張に行くことになったりする。話を聞くだけで逃げ出したくなりそうなほど大変だ。父も冗談で辞めたいと言っている。冗談であってほしいと思う。冗談だとしても、大変な事に変わりはないはずだ。それでも、家族を守るために辞めずに頑張ってくれている。本当に有り難いと思う。毎日、帰宅してから数時間しか一緒にいないので分からないけど、重圧や責任による疲れを取り除く為に酒を飲んだりして休んでほしいと思う。また、次の日も社会に立ち向かう1人の英雄として戦うために。母が夕食の用意ができた、と言う。分かった、と返事をする。あれ?また、コアクマと戦闘していない。その頃、居酒屋で父は酒を飲んでいた。フー、とため息をつく。酔った客が掴み合いの喧嘩を始める。父は謎のアイテムを取り出し、アククウカンに移動する。腕が極太のコアクマが拳を繰り出す。父は避けると同時に腕を掴んで、背負い投げをする。勢いよく叩きつけられてコアクマが消滅する。酔った客が肩を組み仲直りする。リーが現れる。「重圧をはねのけるような一本背負いだ。“ワンインパクト”と名付けよう」父は、名づけ始めたのか、とツッコむ。「キミの息子が気に入ってたから」父は、酒を飲み干すと、お金を払って居酒屋を後にする。「これで残るは完全体だけか。キミたちと別れるのは辛いけど、仕方ないよね。生きるためなんだ」夕食を終え、自分の部屋に行く。日記を開ける。『今日は父が出張に行った。またリーに会わなかった。明日が完全体と戦う日だけど、何か嫌な予感がする。明日になれば全部はっきりする。早く寝よう』日記を閉じる。


【12月25日、繁華街、晴れ】

 今日は、繁華街に来ている。父を迎えに来たのだ。街はクリスマスで賑わっている。テレビ塔前に大きな公園がある。そこに一台のバスが停まる。中から、父が降りて来る。荷物を受け取る。父が疲れたよ、と言う。母がお疲れ様、と言う。母が家にご飯あるよ、と言う。父が早く帰って酒を飲もう、と言う。その時、繁華街の人たちが苦しみ出す。上空からリーが降りて来る。リーを包むように大量のコアクマが集まる。大きな翼を広げたリーの姿はアクマと呼べた。「キミたち、今までご苦労だった。ボクは妖精じゃなくてアクマだったんだ。気づいてた?」頷く。「ボクも知ってた。日記に書いてたもの」読んでいたんだ。「キミたちの戦いのお陰でエネルギーを得られた。残念だけど、お別れの時間だ」父と母が謎のアイテムを取り出す。やっぱり母も持っていた。まさか父も持っていたとは。謎のアイテムを取り出し、アククウカンへ移動する。「この戦いですべて終わる。ボクも全力を出す。キミたちも全力を出してよ!」アクマは大きな翼で激しい風を起こす。吹き飛ばされそうになるのを堪える。“ハンドショット”、“グラスブーメラン”、“グランドピラー”を放つ。アクマに命中する。「そんなんじゃ、勝てないぞ!」“ティアドロップ”と、母の“ボディウィンド”、父の“ワンインパクト”がアクマに命中する。「まだまだ!さあ、キミたちの全力の技をボクに放って!」アクマが大きな翼を広げて受け止める体勢を取る。父と母と目を合わせる。手を繋いで高速で回転する。共鳴して生まれた巨大な力が全身から溢れる。気づくと、アクマが倒れていて、そこにはリーがいた。リーに駆け寄る。「…家族全員の力を合わせた大技…あれは、“ファミリーホーリー”と名付けよう…いいかい?」グッドポーズをする。「今までだましてごめんね…キミたちの勝ちだ…」リーはそのまま動かなくなった。そして、ゆっくりと消滅していった。父が帰ろう、と言った。母がそうね、と言った。家に帰る。やっぱり家が一番落ち着く。夕食を終え、自分の部屋に行く。日記を開ける。『今日は、繁華街に行った。父の出張の迎えに行くためだ』日記を見返す。ここ最近はリーとの出来事が多く書かれている。日記を開ける。『リーのお陰でこの10日間は英雄気分が味わえた。この体験で小説が終わらせられそうだ。ありがとう。さようなら』日記を閉じる。謎のアイテムを机にしまう。これは、“リーフラッシャー”と名付けよう。それでいいよね?グッドポーズをするリーが見えた気がした。

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