愛を壊された女の怨念は恐ろしい

 大変楽しく拝読させて頂きました。ありがとうございます。一部ネタバレ感想になってしまい申し訳ありません。 

 静御前の死には自殺説・逃亡した義経を追ったが旅中で行き斃れた客死説等、諸説ありますが、義経と別れて時が経ない若年のうちに逝去したというのは多くの説にあります。
 大姫に関しては『吾妻鏡』によると、源義高とは大変仲睦まじく、義高を失った大姫は悲嘆にくれて憔悴したと言います。それを知った頼朝は手のひらを反して、義高を討たせた藤内光澄を晒し首にしてしまいます。

 作中の描写から、大切な人と幸せを奪われた二人の女子が『亡霊』あるいは『鬼』となり、頼朝を真綿で締めるように追い詰めてゆく姿が見えて、とても恐怖を感じました。しかも頼朝は何も知らずに『亡霊』に一太刀浴びせたと家臣に自慢する始末。頼朝の背後から、ひたひたと忍び寄る怨霊の声が聞こえて来そうです。

 大姫は自分の見舞いに来た義時に対して、金箔朱扇も腕の太刀傷も隠そうとはしません。そこに愛を壊された女の怨念を感じました。

 頼朝は大姫を後鳥羽天皇に入内させようと躍起になっていましたが、大姫の病は回復することなく病没し、頼朝も落馬とも病気とも言われていますが定かでなく、約二年後に薨去しています。

 頼朝の死は、史実を超えた得体のしれない『何か』によってもたらされたのではないかと本気で信じてしまうくらい、この作品に迫力を感じました。
 
 大変堪能させていただきまして、ありがとうございます。次作も楽しみにお待ちしております。