第9話「これって逆マウント?」
「貴様に俺の心は永遠にわかるまいッ!」
……はっ、しまった。某マンガを読んでいた影響がここに出てきた。
気を取り直して、言い直しましょう。
「あなたに私の気持ちはわからない」
これは障害が、そして何らかの負い目があるが故のお決まりの文句です。「言ってくれないとわからないよ」と反論しても、たいていは「言ったってわかるわけないじゃない」と自分の殻に閉じこもるパターン。
こういう人物……キャラを作中に出せば、「なんだよこいつ」「見ていてイライラする」「自分はちゃんと努力したの?」とヘイトを高めてしまいがちです。前向きな障害者を描くなら欠点さえも魅力に転じることは可能でも、最初から後ろ向きな障害者というのは、それだけでもう第一印象がマイナスに動きます。
せめて容貌が人目を引くようなものであればまだマシかもしれませんが、上記のように理解を示そうとするキャラに対して「わかるわけない」なんて言えば、ほぼ確実にそのキャラは嫌われます。成長の兆しがあったとしても、もう読んでもらえない可能性は高いでしょう。
ここでちょっとリアルな話をしますと。
近頃ではもう、「マウントを取る」が当たり前のように使われています。自分の優位性を高めるため、知識や技術をひけらかして能力があることを知らしめ、相手の言い分を否定することで優越感に浸るというような。
これは、障害者と健常者との間にもあります。「逆マウント」というのか。
理解を示し、手を差し伸べようとする人を信じることができず、突っぱねたり。
上記のように「あなたに私の気持ちはわからない」と壁を作ったり。
かと思えば障害者同士のコミュニティで「あいつはダメだ」と一方的にけなし、罵倒し合ったり。
コンプレックスがあることを、どうやっても出来ないことを常々意識しており、それが長年積み重なっていくと負のアイデンティティの構築につながっていきます。
「〇〇ができない」ということを負い目に感じ、当たり前のようにそれができる人を羨み、妬み、憎む。同じように感じている人の集まりの中でしか、そういった感情を吐露できない。
その先に何があるか? 答えは「何も」です。
さて、創作について話を戻していきますと。
一部なりとも障害者を描く場合、そのキャラクターのコンプレックスについては慎重に扱わないといけません。「過去にこういうことがあった」というエピソードや補足、何らかのフォローがないと厳しいです。
「こいつ嫌いだし、また出てくるんならもう読まない」なんてこともあり得ます。
エピソードというのは例えば……「足に障害のあるA子が転んでしまった時、B男が手を差し伸べようとした。嬉しくて手を取ったA子は次の瞬間、B男に払いのけられ、再び地面に転がり、周囲から笑われた。その出来事がショックで男の人も、人の手を取ることも怖くなった」という具合に。
先ほど言った負のアイデンティティというものは、過去からの積み重ねがあってこそ成立するものです。自分自身のスタンス、コンプレックス、健常者に対するポジティブorネガティブなイメージ。
ひとつひとつ積み上げていくことでキャラを構築していくのは、創作の世界においては当然といえば当然ですね。その当たり前の結論を叩き出すまでに色々言ってしまいましたが。
久しぶりの更新になりましたが、お読み頂きありがとうございました。
もしも気になるところなどあれば、ご意見お寄せ下さいませ。
障害者を創作で扱うにあたって 寿 丸 @kotobuki222
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