勇気を胸に。少年少女の冒険譚！

物語を紡ぐ文章力が高くて読みやすく、情景や心理描写も丁寧です。
村や町、城内の様子も立体的に想像して楽しむことができました。
何より、登場人物たちの振る舞いや台詞に説得力があります。これは事前に、自然な細かい伏線が張られているからこそのもの。とても丁寧に物語を創られているのだなと感服しました。

旅をする主人公の少年モレットの目的がはっきりとしており、且つ彼の持つ勇気と礼節が、読んでいて心地良いです。自然と応援したくなります。
戦いにおいて強いわけではない、時には怯えて躊躇もします。それでもモレットは勇気を振り絞って、目の前の困難に立ち向かっていくのです。眠ったままの母親のために。共に旅する友人のために、出会ったばかりの人のためであっても。

モレットの目的である万病に効くオールの花についてが、今のところ物語の主軸です。その中でモレット自身の成長をも促していくこのお話が、とても好きです。
共に旅をすることになる少女、イサネは快活で豪胆。誰にでも物怖じせずに話せ、ちょっと人見知りなモレットをぐいぐい引っ張っていってくれる頼もしい相棒です。そして、優しい忌人との出会い、事件に巻き込まれる形で出会う王国の王女や騎士たち、虐げられている人々。そうした様々な出会いが、モレットたちを成長させ、導いていくのです。

まだまだ謎は深く、本格的な旅はこれからでしょう。
ぜひ、モレットたちの旅に同伴してみてください！