傅役という名伯楽 🦥

上月くるを

傅役という名伯楽 🦥





 すぐれた歴史小説には、かならずといっていいほど、すぐれた傅役もりやくが登場する。

 アマチュア作家&アマチュア読者を任ずる橙子さんはひそかにそう思っている。


 戦国期以降の大名の子息には、人品骨柄ともに秀でた家臣が養育係に就けられた。

 生まれた直後は乳母が就くが、正直、こちらは乳さえ出ればだれでもよく。(^-^;


 だが、物心ついてより大人になるまで、幼少青年期のいっさいを託される傅役には単なる子守(笑)という以上の重責が託されるし、それが嫡男ならことさらだろう。


 上手に育て上げればお家発展or中興の祖になるが、一歩まちがえばお家取り潰しの愚息にもなり得るがゆえに、傅役選考には慎重にも慎重を期したことが推察される。


 


      🐧




 数多の朋輩中からひとり傅役に抜擢される栄誉は察して余りあるが、預かった子の立身出世で自分もという下心or野心は、分別ある殿なら選外としたろうと思いたい。



🟣実父に疎外された長尾景虎(上杉謙信)を全身全霊で愛しみ育てた金津新兵衛。

🔴うつけと称された織田信長の才を見抜き、磨き、天下人に育てあげた平手政秀。

🟢大坂夏の陣で処刑された国松(豊臣秀頼の子)と最期を共にした田中六左衛門。

🟡家康に勘当された松平忠輝の隠し子・黄河幽清をわが子として育てた法印秀雄。



 もうひとつの父と子の心と心を結ぶ絆の深さに、嗚咽する読者は少なくなかろう。

「すぐれた傅役の存在なくしてすぐれた歴史小説は成り立たない説」の所以である。




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