君がくれるiは十分大きなxのよう

桜零

第1話

「委員長ー。確率と統計って何が違うわけ?」

 机に突っ伏しながら目の前の幼馴染は言った。彼女は今、課題をやり忘れて絶賛居残りを食らっている最中だ。

「もう、説明してあげるからせめてその姿勢は直しなさい」

 へいへい、とダルそうに上体を起こす。

「いい?ここにサイコロがあります」

 そう言って私は実際にはないエアサイコロを手に乗せた。

「では、一の目が出る確率は?」

「六分の一に決まってるじゃん」

「はい、それが確立。でも実際はきっかり六分の一っていうのは現実ではあり得ないの。例えばサイコロの目は、くぼんでいる箇所が少なくて比較的重い一の目が下に来やすい。つまり、六の目が一番出やすいってわけ。これが統計」

「え、まじ?」

「うん、まじ。暇だったら試してみなよ」

 彼女はへー、と興味深そうにうなずいた。

「っていうことはー、確率っていうほど確かじゃないじゃん」

「地球上での自由落下というやつは言葉で言うほど自由ではないのだ」

「委員長?急にどした?」

「な、何でもない!とにかくそういうことよ。誤差も加味するのが統計よ」

 危ない危ない。つい、最近こっそりはまり始めたガンダムの影響で、キャラでもないことを言ってしまった。

「ふーん。じゃあさぁ」

 内心慌てふためく私の気も知らず、彼女はやや含みのある前置きをする。そして、つぶやいた。


「あたしと委員長も確立のようなものなのかな?」


「それはどういう意味で?」

 すかさず返した。

「んー、さぁね」

 彼女は意地悪くニヤリと笑う。

「どちらかというと真反対であってほしいけどね。でもまあ、”名前詐欺”っていう点では当たってるかも」

 私もニヤリと笑って幼馴染の手に自分の手を絡めた。

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