第5話 宇部市、最高!

『――で、ドカンと一発かましてですね、カラッと揚がった轟エビフライ太郎が出てくる流れです。ここで彼は衣の力を得てパワーアップするわけです。つまり、強化フォームですね』

「成る程、爆発して死ぬわけではないんですね!」


 宇部市のPRムービー企画会議である。もちろん宇部松清氏はリモート参加だ。


 キャッキャと盛り上がる課長の後ろで、最早一定のリズムで頷くだけのマシーンと化したエビ太郎笠見さんがざみんである。


「私、あんな鳴き声みたいなノリで『まりん』連呼するんですか……?」


 宇部氏のフリップ芸を見た笠見さんが、げっそりとした声を上げる。


「笠見さん今回台詞多いね。俺は今回もモノローグがメインかと思ったら、終盤でまさかゆるキャラ化した課長とバトルになるとは。いや、あれゆるキャラか?」

「なんか、娘さんたっての要望らしいですよ」

「え、そうなの?」

「お父さんももっと表に出てよ、って」

「出た結果が万倉なすダークパープルあれかよ……」


 それで良いのか課長。


「結局、エビ太郎のエビフライフォームも発注することになりそうですね」

「みたいだね……」


 やはりエビ太郎は爆発してエビフライになるらしい。てっきりそのままお役御免かと思いきや、まさかの強化フォームだったとは。


『それでですね、パワーアップしたエビ太郎と宇部ンジャーズがバトルになるわけです。【小野茶グリーン】がお茶っ葉で目を潰しつつ、【宇部グリーン】がはなっこりーのふさふさときゅうりで戦います』


 おい食べ物で遊ぶな。あとさらっと出て来た【宇部グリーン】って何だ。雑に括るんじゃねぇ。ていうか、グリーン二人もいるの!?


『【宇部オレンジ】はみかんの果汁で目を潰します』


 待て待て。エビ太郎すでにお茶っ葉で目ぇやられてるぞ? あとそいつも初見だよな!?


『【万倉なすダークパープル】は万倉なすで戦いますが、こいつは何度も裏切ってますからね、油断は出来ません』


 課長、仲間から信用されてねぇ。まぁ、何度も裏切ってるならそうなるか。ていうか、何でこいつは【宇部万倉なすダークパープル】じゃないんだ。それもあれ? 裏切るから【宇部】をつけてもらえなかったの? それとも単に長いから?


『そして【宇部ブロンズ】は、手に持ったブロンズ像で殴ります。で、最後に「宇部市、最高!」で締めです』

「おお!」


 死ぬ!

 普通に死ぬやつ!

 それサスペンスドラマの定番の凶器だからな!?

 その状態で「宇部市、最高!」ってどういうこと?!


 課長も「おお!」じゃねぇんだわ! いまのところ一個も感心する部分ねぇんだわ!


「ばっちりですね、宇部先生! これは今回もヒット間違いなし――あっ、間違い! ワハハ!」

『あーっ、もう錦さんったら語尾まで考えてー! やる気十分じゃないですかー!』

「いやぁ~、これも宇部市のためですからなぁ! 若い人達にばかりやらせるわけにはいきませんって」

『ヨッ、上司の鑑! よいしょぉっ!』


 よいしょぉ、ではないのだ。

 お前達、もうそろそろいい加減にしてくれ。

 本当に、本当にこれで宇部市が盛り上がると思うか?

 哀れなエビ怪人がエビフライになってパワーアップしたかと思いきや、撲殺エンドだぞ? 宇部市最高って言っときゃOKとかそういうのじゃないからな? 逆に狂気じみてるから!


 だけれども、もう色々諦めるしかないのである。

  

 何もかもあのエッセイと作者が悪いのだから。


 でもたぶん、一番悪いのは課長だ。さすがはダークパープル。最も身近なところに敵がいたとは。

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それゆけ、宇部市未来企画部地域盛り上げ課!2 宇部 松清 @NiKaNa_DaDa

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