目線

高黄森哉

嫌な十字路

 見られてる。


 ここを通るたびに嫌な感じがする。まず、私がここを通ると必ず人がいないのだ。さっき、この十字路を抜けてきた車とすれ違ったのだが、私が十字路に到着すると奥から車はやってこないのである。


 十字路には、カーブミラーが設置されているのだが、なんだかこれも変で、まるで、首を吊ったように、やや上方に傾いている。だから、車は斜め上しか、見えない筈だ。一体、誰のためのカーブミラーだ。


 あとはそうだ。花瓶が置かれている。この花瓶はいつ見ても、角に一つあるのだが、献花されているとこを見たことない。これについては、単純に、時間が合わないだけかもしれない。私は、この道を下校でしか使わないのだ。


 私がここを下校でしか使わないのは、夕方の交通が少ないからだ。朝は多いのだが、夕方は少ないのである。これも、いま考えて、おかしいと思う。行きと帰りで道を変えるなんて変だ。これについては、私も人のことをいえない。


 見られてる。


 私は十字路の真ん中に立ってみる。十字路の先に大通りがあり、そちらでは普通に、車が行き来している。喧騒がありありと分かるのだが、私の場所までに、薄まってしまう。


 いやな十字路だ。誰もいないのに、どこからか見られている感覚がする。どこを見ても、人っ子一人歩いていないのに。夕日で真っ赤な住宅が並んでいるだけ。唐紅だ。今日は嫌に夕日が燃えている。


 この十字路を立ち去る前に、視線をいつもより深く探してみた。ありとあらゆる窓や角、隙間、また、鏡の中を探してみたが、それらしいものを発見することは、叶わなかった。


 私は、はっとして地面を見た。ただ、アスファルトが夕焼けに染まっていた。次に空を見て、私は、空を見上げるカーブミラーが誰のものか理解した。そう、空には巨大な目が浮かんでいた。



 まるで、呪うように、血管を血走らせながら。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

目線 高黄森哉 @kamikawa2001

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

同じコレクションの次の小説