至灰期～史上最悪の大災害の調査～

とあるネジに残った記録

　苦い薬が喉を通った感触がある。でも、何を飲んだのかとんと分からない。自分が誰なのかも分からない。体が動きづらい。膨らんでいるのか、縮んでいるのか。……ガチャガチャと煩い。キノウビも（エラーを検出しました）（再起動に移ります）。

　強い風が吹いた気がして振り返る。

　風の音、木の葉の擦れる音、何もしない。気のせいか（エラーを検出しました）。

「＃＊＠」

　駆動音がない。製造日から聞こえ続けるはずの歯車の音がしない。錆びているからもっと音がするはずなのにしない。足が土を蹴った音がしない。出した音声がpｱ哀に入力されない。%壷がhv氣を震わせない。次々機能が欠けていく。

　（エラーを検出しました）

　襲撃を受けている。

　立派な尾根の縁が白い。否、雪ではない。抉れるように浸食されて、地表に灰になって、平らに積もる。景色が均等を欠いて崩れている。異常事態異常事態異常事態。直ちに戦闘態勢に入れ。

　―武装形態に移りますか？―yes―変形。

　戦闘中。

　歴史・生存方・戦闘方・技術・感情・知識が破棄されています。

　人格は破棄されています。

　分解されました。

　屑石と宝石に依り分けられている。鑑賞用に変えられた部品を補完。美術性の低下が戦闘効率の上昇に繋がることを確認。戦闘中戦闘中戦闘中。

　情報のバックアップを削除します。

　情報の記録を終了します。

（以降、記録なし）