第2話
よーくんこと俺、
家は向かいにあって、ベランダに出ればいつでも顔が見られる。
幼稚園、なんなら産まれた病院だって一緒。
小学校はクラスが3つしかなかったからだいたい同じクラスだったし、違うクラスでも顔を合わせる機会はあった。
中学校は倍の5クラス。ん?倍じゃないって?恋する男の感覚的には倍なんだよ。日頃の行いは悪くないはずなんだが、1年、2年と同じクラスになれなかった。
会えない。全く会えない。
そして『一緒に陸上部に入るぅ』と言っていたのに、勝手に演劇部に入りやがったので、ますます接点がなくなった。
そして今年は『委員会だりぃ』と言っていたのに、勝手に風紀委員会に入りやがったので、ますます焦った。
彼女に一体何が起きているんだと困惑…はしなかった。
目が恋する乙女そのものだったから。
中学二年生の夏休み、青春ど真ん中。とうとう彼女は自覚する。俺の方が先に気づいてるってどういうことやねん。
『私…先輩のことが好きっ』
汗か涙かでアイメイクが崩れて黒くなっている目の周り。
下着が見えそうで見えないブカブカのパジャマ。
家族みんな寝静まった静かな家。
ゾクゾクするね。だけど同時に、その先輩と会うならどうするのかなと思ってしまった。
もっときっちりメイクしてくるかなとか、
もっとじっくり服を選ぶかなとか、
もっとしっかり考えて、例えば夜中の2時に突然押しかけてくるなんてしないかなとか。
『それは辛いね…』
ただ呟いた。
彼女はそれを自分への慰めと受け取ったらしい。
『よーくんが分かってくれて嬉しい』と泣き出した。
俺はただ惨めだった。
しかしもっと惨めなことが世の中にはある。
「よーくん様!ご指摘早よお願いいたす!!」
うるさいな。かわいい声で騒ぐなよ。心臓に悪いだろ。
だいたい俺にお前の好きなやつの気持ちなんて分かるわけねぇだろ。
これだけ近くにいて、好かれなかった俺と突然現れて乃々子の心を奪ったやつの共通点がどこにあるんだよ。性別ぐらいしか同じとこないだろ。
なんて思ってるくせに、俺は今日も真面目に告白練習に付き合うんだ。
「まずな、今日の告白は呼び出しのLINEからダメだ。」
「なぬっ!!」
ただ君と結ばれたいから。
君と結ばれたい俺は今日も告白に付き合う〜大好きな幼馴染が俺を使って告白の練習をしてくるんだが〜 家猫のノラ @ienekononora0116
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