異世界くだ巻き譚

水田

　異世界の米農家よ。

　お前ら、隠し事してるだろ。

　米農家っつーとあれだ、稲だ。

　育ててるよな？

　もしそれが陸稲（おかぼ）なら、クソ不味（まず）いから誰（だれ）も食わねえだろうけどな、まあそれはそれでいいさ。

　けどな、水（すい）稲（とう）だったら米以外にも、出すもん有るだろ？

　隠し立ては承知しねえぞ？

　まず水（すい）稲（とう）なら、水田だろ。

　そこに水張ったら、当然それって地中に浸透するだろ。

　んで水には、それより軽い物が全部浮くわけだろ。

　そうよ、水田には地中の石油が浮いてくんだよ。

　水田造ったそこが偶（たまた）ま油層地帯だったら、石油なんてぽんぽん湧（わ）くんだよ。

　それが特に多いのを「油田」っつーんだよ。

　まあずっと大昔にゃあな、石油じゃあなくて「燃える水」とか呼んでたらしいがな。

　とにかく、もしそこに米があったら、石油も知られてなきゃおかしいのよ。

　……それを故意に、隠してなければだがな。

　何で隠す？

　何企んでる？

　世界征服か？

　あ？　ほんと承知しねえぞ？

　おう、罰としてそのおにぎり、全部こっちに持ってこいや。

　そうだ、油田で育った米のやつだ。

　あれは本当に美味（うめ）えんだ。

　石油って結局は生物由来だからな、害どころか稲にはいい栄養だ。

　有害性が高いのは、精製して純度が高まったやつだからな。

　そんなことは、お前らは当然知ってるよな？

　だからさっさと寄越せ、急ぐんだよ！

　ここ何日かろくに物食えなくて、腹減って死にそうなんだよ！

　ああうるせえ、「素直に頼めばいいのに」じゃねえんだよ！

　ニヤニヤしやがって、冗談じゃねえぞ！！

　お前らなんて、お前らなんてよお、……チクショウ美味（うめ）えよ、美味（うめ）えじゃんかよ……。