翻訳

 異世界の神よ。


 ちょっときたい。

 異世界への転生や転移を果たした者らは、しばしば「現地の言葉をそのまま理解できる」とかいう、不思議な体験をするらしいな。

 とすれば、翻訳をするシステムが存在する事になるわけだが、しかしあれは一体どうなっとるんだ?

 翻訳してくれるんはいいけどな、見たところ一部のシステムに、妙な不具合がみられるじゃねえか。

 たとえば「リンゴ」が「ルァンガ」になったり、「ピーマン」が「ペーニャン」になったりな。

 あとあれだ、「フィレオフィッシュ」が「さかなフィッシュ」になったりだ。

 なのにさ、同時に「走る」が「バダる」になったり、「美しい」が「ファランしい」になったりしてるシステムが、ひとつも見つからねえ。

 名詞以外の言葉はかんぺきに翻訳されてんのに、名詞にかぎって翻訳失敗してんのよ。

 どないやねん、これ。

 あ? 微妙に別種のやつかもしれねえ、だと?

 言え、せりだいこんにんじんじゃないのに「ニンジン」ってったり、みずじんしんがアレルギーじゃないのに「水アレルギー」ってったりすんだぜ?

 ニンジンすら「せりだいこん」って訳されてねえのに、「リンゴ」と「ルァンガ」だけきっちり区別される理由なんか無えべや。


 いわんや神ともあろうものが、そんなポカミス設定なんかしないだろう。

 ……まさか本当にミスか?

 だとしたら神って案外、そんな大した奴じゃねえのな?

 つか、無能さらす技術者はウチの会社には要らねえかんな、こっち来んなよ?

 仕事探すんなら、刺身の上にタンポポのせるバイトでも探してろよ?

 それとも神よ、何かを意図したか?

 まさかそうやって、みんなをちょってんじゃねえだろうな。

 あ? ざけんなよ?

 だとしたらお前、あれぞ?

 そういう奴は夜道でブッスリやって、「わからせ」にゃならんぞ?

 おうそうだ、ゼッタイにブッスリやってやるわ。

 覚悟しときや。

 ただあれな、ものとは限らない物で、腹とは限らない箇所を、だがな?

 首を洗って、首じゃない所も洗って待ってろよ。

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