四  岸山一見(百見)「PUZZLE」(KANA‐BOON)(『かもす仏議の四天王』より、各キャラのイメソン)


 『かもす仏議の四天王』主人公三人のうち、唯一イメソンがパッと決まったのが百見です。全キャラで見ても二番目ぐらいに決まりました。

 キャラクターとしてのコンセプトは「苦悩する秀才」。


 ……してるか? 苦悩? と思われる向きも多いでしょう。が、「秀才である」ということは「天才ではない」ということ。その間にはあまりにも大きな壁がある。


 仏教的に見れば、崇春はまぎれもなく天才の部類です(バカだけど。執着がないという意味で)。

 そして崇春が仏教を愛するように、百見もまた仏教を愛している。だが、仏法の真髄に近いのは天衣無縫な崇春ではないか? 仏教を学べば学ぶほど――執着すればするほど――自分はその真髄から遠ざかっているのではないか? 

 天才ではなく、かといって凡人に甘んじることのできない熱意を抱えた、秀才ゆえの苦悩。それを密かに抱えた人物なのです。


 が、やってることはだいたい、大真面目な顔で崇春を焚きつけて遊んだり、超真面目な顔でかすみをからかって遊んだり。真剣な顔で賀来をバカにして遊んだり。

 どこかで「この作品の登場人物は皆真面目です、皆真剣なんです」とか書いた気がするんですが。こいつだけ違いますね、どう見ても遊んでますね。……やっぱり苦悩してないんじゃないっスか? 

 ……いつでも遊び心を忘れない、素敵な人物ですね(ポジティブな言い換え)! 


「ツッコミ役みたいな顔をしたボケキャラ」「全部分かった上でボケてくる」というのも、一つのコンセプトかもしれません。


 外見的なモデルは……見た目似た感じの真面目そうなメガネキャラって多いんですが。自分的には漫画『街刃ガイジン』の千庭ちば 岩秋いわあきくん。

 現代を舞台に戦う忍者の話なんですが。秀才キャラといえばからめ手で狡猾に立ち回る印象ですが、千庭くんは秀才らしい分析力を発揮しながらも、真っ直ぐに戦うタイプ。それがまた格好良くてですね……。んで超姿勢がいい。いつも背筋真っ直ぐ。

 その辺りが百見にも受け継がれて……るのか……? とりあえず共通点として好物に月餅げっぺいを入れときました。だから何だというのだ。


 名前のモデルは私が尊敬する作家、内田百閒ひゃっけん先生から。小説は異次元的な発想もさることながら、本当に文章が上手くてですね……。随筆はすごく飄々とした感じです。



 で、イメージソング「PUZZLE(パズル)」。

 (歌詞要約)

 ――答えなどないのか、そう自問自答しつつ真実の言葉を探す。

自分の脳の奥へ奥へと、解明し究明する、謎解きパズルのように。

見つけ出した、捕まえた言葉。それは真実なのか、そのパズルにはまらない欠片ピースなのではないか? 

 それでも解明し究明する、たった一つの真実の言葉を――。


 まさに「苦悩する(それでも決してあきらめない)秀才」という歌詞。作詞作曲された方も、まさにこういう心境なのだろうな、と思わされます。


 そしてこの曲は「私が小説を書くときのテーマソング」でもあります。

 ふぅん、つまり自分こそが「苦悩する秀才」というわけか(超図々しい)。

 ちなみに、あともう一つのテーマソングが「play the world!」(LiSA)。こちらはウォームアップしながら闘志を高めてる曲、という感じです。



 (その他設定)

・好きな食べ物:甘いもの全般(バームクーヘン、月餅、ようかん、ホワイトチョコレートなど)。

 どちらかといえば繊細な甘味があるものより、ガッ! と甘さで殴りつけてくるようなのが好み。かといって海外のお菓子みたいな甘ったる過ぎるのは好きじゃないので意外とめんどくさい。「スニッカーズ」はそこまで好きじゃないけど「ハーシーズのミルクチョコレート」は好き、という感じ(余計分からない)。

 他、ぬか漬け、玄米茶、温かい烏龍茶。

・よく行く服屋:「ユニクロ」「たまに奮発して無印良品」

・履いてる下着:「ユニクロのトランクス」「ピンクやライトブルーなど、意外と春色のやつ」

・好きなお経:「維摩ゆいま経」「理趣経」

・好きな作家、作品:内田百閒『柳撿校の小閑』『東京日記』『虎』『サラサーテの盤』、三島由紀夫『午後の曳航』『仮面の告白』、夏目漱石『こころ』



 服に関しては、「正直ファッションに興味は無い」「そこに使う金があったらもっと本を買いたい」けど「きちっとした格好でないと嫌だ」という。

 そこからの結論として「全身ユニクロ。上から下まで、下着までユニクロ」なのです。自分のファッションセンスを信用してないので、手堅いブランドを選びたい、というのもあります。

 あまり服選びに時間をかけたくないので、秘奥義「そこのマネキンが着てるやつ一式下さい」も余裕で使いこなします。

 ただ、試着は入念にしてジャストサイズを選ぶようです。


 下着は意外とかわいい色。眼鏡クイッ、てやって偉そうなこと言っててもパンツはピンク色です。かわいい。


 ふぅん……たくましい崇春と(下着の趣味が)かわいい百見、一つ屋根の下……何も起こらぬわけはなく……というわけか(ウソ)。



 『維摩ゆいま経』は、維摩ゆいまという、在家信者だけど釈迦の十大弟子や菩薩(仏というかここでは釈迦の高弟みたいな扱い)さえも論破する賢者が出てくるお経。

 あるとき彼が病に伏せったと聞き、釈迦は弟子を見舞いにやろうとするが。高弟も菩薩らも、彼に論破された苦い思い出があって行きたがらない。

そこへ名乗り出たのが菩薩のリーダー格、知恵の菩薩たる文殊菩薩。彼と維摩ゆいまとの問答から、大乗仏教の思想を明らかにしていく……という、戯曲的なお経だそうです。

 出家者中心の上座部仏教から、ある意味在家中心ともいえる大乗仏教の在り方と、その思想を端的に示したもの……らしい。

 私も(訳と解説があれば)読んでみたいお経の一つ。図書館にあったような気はするんですけど。

 『理趣経』は密教の奥義を示した経典。この解説書『理趣釈経』の貸し借りを一つの契機として空海と最澄が決別したことでも有名。

 これは古本屋に訳と原文つきの解説書があったので私も買いました。個人的な見解では、上座部仏教・大乗仏教を経ての原始仏教へのある意味での回帰、そしてその先を見せてくれた、仏教哲学の一つの完成形……という解釈です。まあその完成形の先も、禅とか念仏とか面白い哲学がいっぱいあるんですけど。


 好きな作家の傾向は古典的な純文学ですね。

 内田百閒先生は天才・三島由紀夫が「文章の上手い作家を聞かれ、その名を挙げた」と言われていますが。理知的な、カチッとした文章の三島由紀夫に対し、百閒先生は非常にファジーな、感覚的なところを確かな文章力で描かれる。真逆に近いスタイルに見えますけど、それでも三島由紀夫が高く評価してるのが興味深いです。

 あと百見くんは夢野久作とかも好きそう。中学の読書感想文は『ドグラ・マグラ』かもしれません。もしくは『理趣経』。……どっちにしろ担当したくない生徒です。



 他、

・趣味:読書、寺院巡りと仏像を眺めること。好きな仏は四天王、文殊菩薩。

・宝物:愛用の万年筆(パーカー社の高級ブランド、デュオフォールド)、愛用の本型メモ(百見全書、と本人は呼んでいる)


 デュオフォールドは様々な和平条約の調印時に使われたことから「平和のペン」と呼ばれているそうです。他に、『星の王子さま』の作者、サン・テグジュペリが愛用したことでも有名。

 確か五万円ぐらいしたよな~、と思ってネットで見てみたら……今は十万~十三万円でした……。百見くんは気軽に振り回さない方がいいんじゃないですかね……? 


 住職である祖父からの贈物だそうです。儲けてんな百見ち……宗教法人は非課税……ってコト!? 

 お寺の収入だけじゃなく、たぶん土地を貸してたりとか、別の収入があるんだと思います。祖父の愛車はアルファロメオと軽トラ。


しかし地主かよ……おいおい、とんだお坊ちゃんだぜこいつ。

ユニクロ行ってる場合ではない。なのに無印良品に行っても「バターチキンカレーだけ買って帰ってくる」「横の仏壇屋で仁王像を眺めている時間の方が長い」とかである。



 というわけで、今回はこの辺で。次回は主人公三人の一人、というか主にこの子の視点で語られるのでメイン主人公なのでは? かすみちゃんです! 


 あと、やるやる言ってずっと掲載してなかった(書き上げてはいた)本作のスピンオフ(なのか)、今月(2023年9月)4日から掲載していきます! 

 主人公はまさかのあの人です! たぶん「……誰?」ってなります!

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