第4話 アフリカの怖い草食系男子の話

 ※このお話はフィクションということにしておきます。実在の人物・団体・事件とは一切関係がないかもしれません。


 今回は、私の個人的な体験談『アフリカの草食系男子怖い』を披露します。


 私は大学卒業後に海上自衛隊に入隊して、そこでアフリカに一度派遣されています。

 海賊対処行動というやつです。

 で、約100日ほどアフリカにいたんですが、ずっと任務をしているわけではなくて、休息日もあるわけです。

 そんな張りつめてばかりでは息が詰まりますからね。


 その時に、アッサル湖という塩湖ツアーがありまして、自分も引率という立場で参加しました。

 現地のバスというかワゴン車ですかね、をチャーターしたんですけど、当然、車の運転手さんも現地の方だったんですよ。


 ちょっと話は変わるんでけど、私がこの任務で行った場所はジプチという国でして、ここは麻薬が合法だったんですよね。

 イスラム系だったから、ビールとかアルコール類は新聞紙にくるまれて渡されるのに、凄い国だなぁ、と思います。

 で、これはカートという麻薬だったんですけど、見た目は木の枝についた葉っぱで、それをもぐもぐと口にするわけです。

 確か、高野秀行さんの本に詳しく載っていた気がします。興味がある方は探してみてください。


 で、最初に言った『草食系男子が怖い』という話はここに繋がります。

 そのツアーの運転手さんが葉っぱそのものの麻薬を、運転中ももぐもぐし続けたという。いやいや、ナウマン象でもそんなに口の周り汚さないぞ? というぐらい口の周りが緑で彩られています。

 おいおい、アフリカの草食系男子半端ないな! というのは今だから笑い話のようにできることで、その当時は本当に怖かったんですよね。

 引率という立場だったので、私は助手席に座っていたから、隣のドライバーさんがジャンキーなんですよね。

 左を向けば、奴がいる、状態ですよ。


 で、更に怖いのが、このツアーでは何台か現地の車を借りていて、その中にはボスみたいな人がいたんですけど、その人はまともで、そのドライバーさんたちに説教するんですよね。

 運転中のドラッグは止めろ! 的な。やっぱり、ボスは強いからそのドライバーさんも神妙そうに頷くわけですよ。

 ジャンキー特有の濁りきった目だから、分かっているわけがないんですがね。


 運転休憩が終わったら、そのドライバーさんすぐにドラッグをモグモグですよ。

 私は非難の意味を込めて、にらみつけたんですけど――いや、嘘です。本当は、いろいろ恐ろしくてチラチラ見てたんですけど、そのドライバーさん、私に告げ口されるとでも思ったんですかね。


「ん」ってドラッグを私に差し出してきたんですよ。感じとしては『となりのトトロ』の傘を渡すお前んちお化け屋敷少年カンタ

 いやいや、物欲しくて見ていた訳じゃないですから! 仕方ないなぁみたいに見られても困るわけですよ!

 私は「いやいや、結構!」という感じで断り、その時買っていたビールを一気に呷りました。もちろん、新聞紙にくるまれています。暑かったからやたら美味しかったことも明確に覚えています。


 ただ、冷静に考えると、一番怖かったのは、薬中だからというところではなく、ルールを守らないという部分ですかね。

 日本で言えば、飲酒運転をしながら酒を勧めてくる感じ。法律違反で「そんなに欲しいのかよ」みたいに勧めてくる人間って怖すぎるじゃないですか。

 害意がないどころか、多分、善意もあった気がします。口止め料というか、共犯者を作るという意識さえ微妙。

 「コミュニケーションとれない」という判断は、嫌われるならまだしも怖がられる危険性の方が最近は高い気もします。

 

 それと、郷に入っては郷に従えとは言いながらも、その『郷』ってどの範囲なのかなぁ、とか今では考えます。

 常識や法律はもちろん、その場でのルールという物があると思うんですよ。これを無視するのは案外難しい。

 どちらを優先するかの判断がなかなか難しい場合もあるので、非難する意図もないです。


 ぶっちゃけ、よく分からないことも多いですからねぇ。

 あと、繰り返しますが、このお話はフィクションですし、実在の人物・団体・事件とは一切関係ないかもしれません。

 そういうものです。

 ではまた。

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