第2話 機械音痴

「よろしくお願いしますッ

  よろしくお願いします」

出演者待機室までの道のり、ライブハウスのスタッフとすれ違う度に頭を下げる。


「ちょっと君〜」

「はい!おはようございます。」


「君さ、さっきくれたオケ音源 再生出来なかったんだけど?」

「えっ、なんでですかっ?」


声をかけてきたのは、今回のアニソンライブを仕切っている

プロデュース的立ち位置のスタッフの人だった。


「いや、こっちが聞きたいよ

 もしかして出力フォーマットとか設定間違ってたりしない?」

「シュツ…リョクフォー?」

「出力フォーマットね」

「たぶん問題ないと思いますよ!昨日攻略本見ながら夜鍋して作ったので!」

「攻略本ってなによw

 まぁ、なんでもいいけどさ まだ開演まで時間あるしもう一回焼き直してきてもらえる?」

「焼き直しっていうのは…その…

  分かりました!やってみます!」


一度控室に置いた荷物を再度持ち、足早に駆け出していく彼女

「おつかれですッ

  おつかれさまで s 」



「あの子、挨拶も元気だし歌も上手いけど全然人気出ないよなぁ」

「あ〜SNSとかあんまやって無さそうですもんんね」


近くに居た音響スタッフと話し始める

プロデューサー


「SNSな〜やっぱ今の時代、いかにネットで自分を可愛く見せるかで、売れるか決まるよな」

「そうっすね。多少歌が下手でも、自撮りが可愛いきゃファンは着くし、チケットも捌けますからね〜」

「あー全くそうだよ。大丈夫かなあの子、CD焼くって意味解ってるんかな?」

「いやー無理じゃないですか? だってあの子って、この界隈じゃ有名な機械音痴の子ですよ」



一方その頃

自宅に帰り、攻略本と睨めっこをする 駆け出し歌手 かえ


「あぁ〜もう どうしよう」







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三人寄れば文殊の知恵 @usui_soma

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