第2夜

「目立った外傷はなく、後ろから一突きといった感じです。現金はそもそも置いていなかった。盗まれたのは装飾品だけですね?」

 ぶっきらぼうな言い方のこの男は50前後といったところか。スキンヘッドの蛸入道のようだ180cm以上あるだろう巨体で庭をウサウサと回っている。11時を回ったところでやってきたこの男は「大田原市警察署刑事課で巡査部長をしている川原と申します。」やや縮こまった感じで名刺を渡してきた。

「お嬢さんが買い物に行ってすぐでしょうね。怪しい人を見たりしましたか?」

「いえ、田舎ですので知らない人がいたら目立つでしょうし···両隣からも家は見えますから。」

 家の裏には少し急な山があるこの山を越えてまで来る強盗があるだろうか?

 両隣からは庭は広いが家の玄関までよく見えるようになっている。ましてや地元の人以外通りはしない県道が前なのだから、車が停まれば嫌でも目立つ。見慣れぬ車ならなおさら「見慣れない車が家の前に止まってるよ」とお隣さんが親切に電話をしてくれる。自宅警備会社を入れる必要もない。

 「まぁ強盗に入って鉢合わせたって所でしょう、金の指輪やブランド腕時計、金のネックレスがない位ですね?」

 すべてが玄関の飾り棚に飾ってあったものだ。田舎独特の10畳以上の大きな土間を利用した玄関には客間も兼ねて飾り棚が設けられていること多い。家ももれないく同じ仕組みで飾り棚があり、横には錦鶏鳥の番の剥製がこんにちわしていた。こちらは持っていかなかったようだ。

 お昼も過ぎ14時近くになった頃か警察達は片付けを始めた。意外とあっけないな···と思った。何か他人事のようだ、現実味がわかないだけだろうけれど。

 これから葬式か···面倒くさいと思ってしまう。

 父親はゴルフへ行っていたが早々に帰ってきてピクリとも動かない母親を見て呆然としていた。あまりにも呆然としていたので茶の間で座ってもらっている。ショックも強かったのだろう頭に手を当ててもう1時間以上もああしている。もう廃人になってしまいそうな勢いだ。

 

 


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半分 @makomako123

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