半分
@makomako123
第1夜
静かな夜だ、明るい月に少しだけ雲がかかっている。
いつもはうるさく鳴いている蛙の声も聞こえない。雨が降らないという予報でもある。
冷えた缶チューハイがとても美味い。40を目前にした今日は記念すべき日なのかもしれない。
昼過ぎまでは忙しかった。
午前中に牛乳を買いに出掛け、帰ってきたら玄関に母親が倒れていたのだ。ちょっとサンダルを履こうかな~と足を入れたところで刺されたのだろうか、背中には包丁が刺さっていた。
テレビで観るほどの血はあまり出ていなかった。見てわかるほど土気色の顔は救急車ではなく警察を呼べといっていた。
いつも猫が出てしまうから閉めろと口酸っぱく言っていたドアが少しだけ開いていたのでなんだろうと思ったらこの有様だ。猫は私の部屋にいた。ドアは閉まっていたので猫は出ていなかった。
警察は直ぐに来た。近くの駐在所の警務官である。日頃猟銃の件でお世話になっている顔なじみだ。猟銃の件については後談で話すが、知っている警務官が来てホッとした気がした。なにせ広い庭に田舎なもので隠れる場所は多々ある。犯人が遠くへ行った保証もない。
「だいぶ落ち着いていますね?」
「生き返るわけではないですし、仕事が老人ホームですからね」
老人ホームにいれば亡くなったご遺体は何度も見ている。最期に立ち会った事も何度もあった。しかし今のはそっけない返事になってしまった。変に思われただろうけど
「母親とは馬が合わなかったので、心配っていう気持ちは···ね」
「そうでしたね、お母様とはあまり会話もなかったんでしたね。申し訳ない。」
以前、猟銃の件で聴き取りに来た際に答えたことと会話だった。
元来、母親には怨みはあれど感謝はなかった。
今回のこの事件さえ、神が与えてくれたプレゼントなのかもしれないとさえ思った。
市の警察は早かった、ものの30分ほどで家に来た。テレビのようにアルファベットの書かれたプラスチックのスタンドは使わず、チョークのようなもので次々と遺体の周りに丸と文字が書かれていった。ある程度書かれ写真が撮られると遺体はワンボックスのパトカーに入れられていった。
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