第6話 我々が天に立つ
場面転換――。
宿屋にはたった二人、レーヴァとニュクスのみであった。
実は宿屋にエルザ達がいつ襲撃してくるか分からないため、ニュクスは大金を払い、怪しい連中が近寄らせないようにしていたのだ。金を貰った以上は仕事はしっかりこなす、信用の出来る宿主だ。既に宿泊して数日だが、怪しい連中は一度足りとも姿を見せていない。
そんな約束を遵守する宿主であったが、どうにも今日は一度も、ニュクス達の前に姿を見せずにいたのだ。
仕事熱心な彼を知っている者であれば、そんなことは有り得ず、放ったらかすなど以ての外。何か事情があったのだと思うだろう。
それもその筈、彼は宿の事務所で気絶をしていたのだ。
気絶した宿主を見下ろし、眠った事を確認すると泊まっている客の情報のメモを漁る"爆乳の褐色の女"が一人。宿主を気絶させたのも彼女である。
その眼には強い憎しみと殺意が込められており、その憎しみと殺意の矛先を向ける相手を見れば、すぐにでも殺してしまいそうな程の剣幕だ。
「此処だ……」
ギラギラとした眼でメモを見回すと目標の敵の名を見つけ出す事に成功したのか、ニヤリと笑い、女は駆け出す。
敵は此処に居る、俺をこの身体にした復讐を成し遂げる為に。そんな身勝手な欲望の主人は遂にニュクス達の元へ辿り着いたのだ。
「よぉ……、久しぶりだな……」
150程度の身長には似合わない褐色の爆乳と、その口からは可愛らしい八重歯が見え隠れる。
だがそんな女をニュクスは見た事がない。
「……誰?」
「あー、そうかそうか。確かによぉこの姿じゃ分かんねえよなぁ……」
すると男は上半身の人の顔よりも大きな褐色の乳房を見せつけ始める。
レーヴァはその行動に何の意味があるのかが、最初は理解が及ばなかったのだが少しずつ記憶が掘り返されていく。
そう、その乳房にはほくろがある。必死に記憶を掘り起こすと……、それは"光の聖女エレナの物と同じ……"。
「あの性女の魔力を吸収しといて良かったぜ……。俺はこんな身体にしたあの馬鹿女共の復讐の為によぉ! まずは八つ当たりにテメエに会いに来た!! テメエの女共を寝取った男なんだよぉ!」
「……嘘だろ?」
この褐色爆乳女はなんと聖女の魔力によって女体化、蘇生を自らの意志力と才能で果たした間男であったのだ。
「何……言って……」
ニュクスは絶句していた。まさかこんなにも無様な尊厳の凌辱があっただろうか?
怒り狂うその姿も、今の姿では愛らしく振る舞っている雑魚雌としか男性は認識しないだろう。
「うわぁ……」
◆
何なんですかコイツは。あの間男である事は、魔力の形で理解はしました。
ですが、今の歩く肉便器みてえな姿で怒っても、マゾ雑魚の劣等種が犯されるためのイキり煽りにしか見えません。
怒る気持ちは分かってあげてもいいでしょう。
自慢の男根を失ってしまった、それどころか男根と比例して胸も大きくなった事実を彼自身も薄っすらと気付いている様子であり、彼が最も見下し、都合の良いオナホールとしか思っていなかったミニマム爆乳女に自分がなってしまっている事実など耐えきれる筈もないでしょう。
「テメエのせいでこんな姿によぉ……。どうしてくれるんだ……、最も劣等な女の姿になっちまったんだぜ……? 」
「言い過ぎじゃない?」
「煩えっ!!テメエのせいでこの姿になったんだ……、テメエが俺を非難する事なんて出来ねえんだよ!!」
ブラも付けずに何とも豊満な風船おっぱいをブルンブルンと揺らす姿は何とも見苦しい無様な醜態を晒している光景は、僕の笑いを誘い、遂に耐えきれなくなってしまった。
「アハハハハハハハハハハハハハハハハハッ!!!!!」
自分からこんな声が出るのかと驚いてしまう。
今の彼は言語を理解し、オスを興奮させて、孕ませられる為だけに存在する家畜の身体そのもの。良識のあるのレーヴァだからこそ、この場は無事に済んでいるだけで、外に出てしまえばひとたまりもない。
「無様過ぎてウケますっ!!アハハハハハハハハハハハハッ!!!!」
元寝取られ好きの血が騒いでしまい、無様な男を見て興奮が抑えきれずにいる。
笑う度に間男は血管がはち切れそうな程、怒りを表情に浮かび上がらせるが、豚がイキっても豚は豚である。
そんな駄肉をぶら下げておいて、私に逆らおうなど、最早ギャグ。
何ならレーヴァの巨根で性欲処理の道具として使われる末路になっても、僕はそれをただただ爆笑するだけでしょう。
「糞が……!!」
先程からレーヴァを殺そうと前進しようとするが、身体が言うことを効かなそうだ。
当然である、私のサキュバスの力で一睨みしてしまえば、あんな雑魚雌の身体など言う事を効く筈ない。
更には魔力をもってして、その肉体を観察すると彼の身体は復活したとはいえ、魔力ベースは光の聖女のエルザの物であるが故に、一度エルザに勝ち、その魔力を奪った僕には絶対に勝てないのだ。
「この……俺が……、俺様が……!! このぉっ! ヘラクレス様がぁっ!!!」
ヘラクレス、それがこの男の名だ。だがそんな名にはもはやそれほど意味はない。そんな勇ましい名を名乗れるほどの男ではなくなってしまった事は明白、駄肉などに改名した方が良いだろう。
だがそんな駄肉に優しく寄り添う勇者、それがレーヴァでした。
「……大丈夫か?」
自らを辱め絶望に陥れた元凶の男を、心配し手を差し伸べる。彼の博愛主義は何とも素晴らしいとも言えましょう。
「ダメです、レーヴァ。こんな奴に手を差し伸べては――」
ニヤリとヘラクレスが笑みを浮かべ、顔を近づけたレーヴァに魔力を込めた拳を叩きつけんとする。
優しさを与えても、それを受け入れるなど到底あり得ないのだ。
それは相手に優しさを受け入れるほどの度量がある場合に限るのだ。そしてヘラクレスには当然そんなものがあるわけがない。
当たり前のようにレーヴァはヘラクレスの拳を払う。問題はその為に彼の手のひらに触れたときだ。
「……んぎぃいいいいいいっ!!??!!??!」
突如、体内の魔力が暴走を始め、感度が数千倍となったのだ。空気に触れるだけでもイキまくるマゾ雑魚家畜の身体は、一切の抑えが効かずに絶頂の波に畜生にも劣る声を撒き散らす。
真っ白になる一瞬前、何故こうなったのかを冷静に分析するヘラクレスは一つの答えに辿り着く。
(負けたがっている!? この……俺様が……?!)
そうコイツの身体は負けたがっていt。一体誰に? レーヴァただ一人にだ。何故そんな本能に目覚めたのかもまた明白だ。
「……言ったでしょう。今の貴方はただの歩く肉オナホです」
巨根に目覚めたレーヴァに雌としての魂が負けたのだ。
本来ならばありえはしない奇跡だが、魔力とはそういう物だ。通常ならば絶対にありえないだろう幻想を引き起こす代物。
一つでも誤ってしまえば成し得なかった所業を彼は今、不本意ながら果たしたのだった。
だがその結末がこれはあまりにも無様に過ぎる。所詮はヘラクレスもこの物語ではただのやられ役でしかなく、こうしてレーヴァに触れただけで敗北する歩くオナホール以下でしかないのだから。
「……無様だ」
僕はニヤリとこの男の所業を思い出し、再び高笑いをした。
TS淫魔の俺が寝取られ勇者に聖女と勘違いされ、世界を救うまで 科学式暗黒魔女 @KUROMAJO_science
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