猿回し
雨語入門
第1話
猿回しを20年やってきた。お客さんに猿の滑稽な動きを見せて楽しんでもらうのはもちろんだが、人とサルが友情で結ばれていることを示すことで、温かい優しい気持ちになってもらいたいと思ってやってきた。
俺は日本猿の彼女と新しい芸をたくさん作り上げた。一番受けた芸は、「俺のことどう思ってるの?」と尋ねて、彼女が『大好き』『大嫌い』の二枚の紙から『大嫌い』を選ぶやつ。俺は驚いたり、怒ったり、悲しんだりする。会場の盛り上がり次第では、なんども繰り返した。
彼女は今日、定期検診に行っている。もうお互い高齢だから、いつまでできるか分からない。子猿だった頃の彼女を思い出しながら、次回の上演のために『大嫌い』の紙を作り直す。
(了)
猿回し 雨語入門 @amegonyumon
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます