迷子の風船 〜約束の地へ浮かべ〜

藍条森也

約束の地へ浮かべ

 ああ、ついに自分の前にもやってきてくれた。

 迷子の風船。

 それは、人生に迷い、悩む人間の前に現れるという。

 迷子の風船をその手につかめば、もう迷うことも、悩むこともなくなる。一生、幸福なままに暮らせるという。

 目の前を漂う風船に手を伸ばす。

 風船はしっかりと手のひらに張りついた。

 そのまま風船に連れられて空へ、空へと飛んでいく。

 約束された幸福の地を目指して。

 そして、いつか――。

 自分自身が迷子の風船となって空を漂っていた。


 「本日の人間ホイホイ捕獲者数二八九三〇人です」

 「うむうむ。良い結果だ。いまや限られた地球の資源では役に立たない人間など養ってはおれんのだ。夢と現実の区別も付かないようなフワフワした人間は、さっさと風船となって消えてもらうに限るからな」

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