エピローグ 大人

 初夏の穏やかな日差しの中、僕は家族と大きな公園に出かけていた。一面に若緑の芝生が広がり、その芝生は深緑の木々にぐるっと囲まれていた。蝶やとんぼが辺りに飛んでいて、雄大な自然を物語っていた。

 木陰に敷いたレジャーシートに、もう寝てしまった3歳の娘を抱えた妻と座って、芝生の上で楽しそうに遊ぶ5歳の息子を眺めていた。


 息子は、そっと、弾けないように、弱く、そして長く息を吹きかけて、大きなシャボン玉を作った。

 大きなしゃぼん玉は、息子の頭上でかすかにうろこ雲がかかった澄んだスカイブルーの空にふわふわと浮かび上がった。

 丸い輪郭は虹色に輝いていた。緑で生い茂った地面、澄んだスカイブルーの空を背景に、しゃぼん玉は浮かんでいて、美しい眺めだった。

 息子は浮かんでゆく頭上のしゃぼん玉をじっ…と見つめていた。


 僕はそんな息子の姿と昔の自分の姿を重ねていた。

 ───炎天下、群青の空へと浮かび上がるしゃぼん玉に魅入られていた、あの夏の日。


 息子は、しゃぼん玉を見て何を思っているのだろう。

 

 

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しゃぼん玉を辿る。 文学少女 @asao22

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