その場にいるような感覚が味わえる秀逸な和風ファンタジーの物語

この作品の特筆すべき点は、その世界設定にあります。
ジャンルとしては「現代ファンタジー」となっていますが、ある意味「異世界ファンタジー」でもあり、正確には「異世界で和風で現代の田舎ファンタジー」でしょうか。
ふざけているように見えるかもしれませんが、これが絶妙なリアル感とファンタジー感を醸し出しているのです。

私たちの身近なところでも存在している田舎、祭事、お祓い、穢れの概念をベースに、ファンタジーな要素である神、物の怪、具現化した穢れなどが、物語を分厚くする要素として被さってきます。
結果、まるでその場面をこの目で見ているかのような錯覚に陥り、物語の世界に入り込むような感覚が味わえるのです。
また、その描写も極めて丁寧で、怖いところは本当に怖く描かれており、特にバトルのシーンではかなりドキドキしますよ。

では、バトル一辺倒なお話かというと、決してそんなことはありません。
生き生きとした個性的で魅力的な登場人物や物の怪たちが、物語を鮮やかに彩っているからです。

また、読みやすさもオススメのポイントです。
各エピソードが短めなため、時間のある時は一気読みができますし、
時間が無い時もこまめに読み留めることができますので、仕事の休憩時間にちょっとだけ…といった読み方も可能です。

神を敬い、物の怪を恐れ、穢れを祓う。
その土地々々に土着の信仰があり、独特な祭事が催される。
そんな在りし日の日本の原風景に近い世界で繰り広げられる物語。
貴方もそんな現世に迷い込んでみませんか?

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