自由なのに動かない自分と自由がなく動けない鳩

自由なのに動かない自分と自由がなく動けない鳩

　ああ、あと５分で今日が終わる。今日やろうと思っていたことは終わらず、あと５分でできるはずがなく、今日が終わってゆく。今日はもうできないよ、あと５分だし。それにもう布団に入ってしまっている。「やろうと思っていること」は、明日の自分は明日中に終わらせることができるのだろうか。わからないけれど、とにかく前向きに、明日の自分に期待して、未来に明るい希望を持つことが重要だ。普段は不真面目でひねくれたことばかり言うくせに、こんな時だけ真面目なふりして素直な言葉を吐いてみる。しかし、この素直な言葉や明日に向かって輝いているこの両目も嘘ではないと思う。輝いていると言っても、もう布団に入っているので目は瞑っているのだが。いや、そんなことはどうだっていい。そんなことは本当にどうでもいい。こうやってしようのないことばかりを考えて、話を脱線させてしまうのも自分の悪いところだと思う。ああ、またずれた。そうそう、ひねくれた自分も素直な自分も自分だと思うという話をしていたのだった。自分の中に相反するものがあるというのは複雑だ。二つの考えが頭の中でずっと論争を繰り広げているのだ。たとえば、「休みの日は純喫茶で小説でも読みたいよね。」「はは、エモいってか？読んでるふりしてスカしてるだけだろ」とか。純喫茶で小説読みたい自分も、それを腐す自分もどちらもふざけてなんかいない。どちらも真顔だ。ああ、くだらない例を挙げてしまった。こんな自分だから、布団に入った後の暗闇の部屋でも、暇をすることなく考え続けられるんだろうな。暇潰しが上手だね、自分。良いことだ。こんな自分だから、１日じゅうくだらないことばかり考えて、「やろうと思っていること」は終わらず、ただ１日だけが終わってゆくのだろう。はは、どう考えても負の遺産の方が多いや。「今日やろうと思っていること」はもうずっと「今日やろうと思っていること」のままだ。「昨日やろうと思っていて、やったこと」になることは、ほぼない。だって毎日「明日が」来るんだもん。有難いよね、ほんと助かる。いつになったらできるんだろう？もう自分が怖いよ！できなさすぎて…。深刻ぶってみたが、まったく深刻な問題ではない。いや、ここまで来ると逆に深刻か？どうだろう。なんにせよ、明日「やろうと思っていること」をやれば、それを「昨日やろうと思っていて、やったこと」にできるのだから。あーあ、明日「やろうと思っていること」できんのかなあ、自分。

明日に希望を持て！あ、また自分の中のポジティブなやつが出てきて、こっちに向かって叫んでいる。とても笑顔で。まるで、河川敷から夕焼けに向かって叫ぶように。そういうとこが苦手なんだよな。あ、自分の中のひねくれたやつが自分のいる場所から全く動かずに、遠くでボソっとつぶやいた。

カチッ。鳩時計なのに「うるさい」という理由で、鳴き声を出すことも、あの小さな穴から出ることも許されない鳩がなんとか外に出ようと、もがいている音がした。

今日が終わる。