大人っぽい彼女のピアスが、なんかエロい。

野原想

大人っぽい彼女のピアスが、なんかエロい。

彼女のピアスが、なんかエロい。僕の彼女はとても大人っぽい。

雰囲気がとても落ち着いていてしっとりとしている。そんな彼女の耳たぶにはピアスの穴が開いている。左右に1つずつ。行く場所や会う人によって付けるものを変えているらしい。僕といる時は小さな石のものなどをつけていることが多い。何故かと聞いたら 『大きく着飾る必要が無いから』 との事。

最も素に近いナチュラルな姿での小さなピアスのエロさを感じているのは僕だけなのだと思ったらこれ程に興奮するものは無いと日々思う。

昼寝から起きる午後4時。崩れた髪型の中でちらりと見えるピアスの魅力を漏らしそうになりながら夕飯を作る手を動かす。

『お風呂入ってくる』 とペタペタ浴室へ向かう。

タオルを用意するために彼女が入ってから5分後くらいに洗面所に入る。タオルを置く洗面台の上にコロンと並べられた2つのピアス。普段ほかのアクセサリーをつけない彼女にとって唯一つけている装飾だ。それを外して僕の家で風呂に入る。僕は一体どうしたらいいのだろうか。

なんてぼーと考えていたらガラリと扉が開いた。

『あ』

『ご、ごめん。』

『いいよ別に。タオル取ってくれる?』

『あ、うん。』

『ご飯もうできたの?』

『あー、もうすぐできるよ。髪乾かし終わる頃には食べられると思う。』

『わかった、ありがとう』

洗面所を出る僕の背後で体を拭く彼女。キッチンへと戻ってせっせと盛りつけをする。ビーフシチューは彼女の特段好きなメニューで僕が彼女に最初に振舞った料理でもある。一緒にいた時間は長くなかったが、家に来るまでの流れはとても自然なもので、少しカッコつけて作ったビーフシチューを 『おいひい』 と食べてくれた彼女の可愛さを、僕だけが知っている。コトっとテーブルに料理を並べる。

『あ、いい匂いする』

『上がったの、出来たよ。食べよう。』

タオルを首からかけて7割乾いた髪を緩く結いている。そしてこれだ。

『またピアス付けたんだ。』

『うん、私体質で結構塞がりやすいからなるべくつけてるの』

椅子を引いて席に着きながら耳をカリ、と引っ掻いた。『ふーん。』 なんて言いながら僕も席に着いているけど視線は彼女の湿った髪と小さなピアス。

『いただきます。』

手を合わせる僕をじっと見つめた彼女は 『好きだね、ピアス』 と笑いながら言った。『へ?』 おかしな声を出す僕を見てまたもう一度小さく笑う。

ふらっと胸の前に持ってきた手を合わせ 『いただきまーす』 と僕を見る。

『ど、どうぞ。』 ほつれた髪を耳にかけて僕から目を逸らす。

視線の先のビーフシチューに目を輝かせている。

『好きだよ、ピアス。』

もう終わった会話に無理やりねじ込まれた好意にちょっとだけ驚いたような顔をして 『知ってる』 と笑う。


その後、彼女は大きくビーフシチューを頬張った。

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大人っぽい彼女のピアスが、なんかエロい。 野原想 @soragatogitai

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