第19話 和解

「ふむ。どうするかの。女神同士での交戦は禁止されておるのじゃ。そうすると必然的に、妾とおぬしが戦わねばならん」

「そう急かすものでも無いんじゃないかな。ところでアンドロイドはスマートフォンの女神。という事は立派なスマートフォンを持っているのかな」

「そうじゃ。iPhoneXX《えっくすてん》なんかより、高性能なスマートフォンを持っているのじゃ」


 そう言うとアンドロイドは1個のスマートフォンを取り出した。


「防塵防水はもちろんのこと、使用できるアプリはiPhoneの倍以上じゃ。そして最大のメリットはコスパが良いことじゃ。」


 俺も知っていてアンドロイドに質問したが、最大のメリットはコスパだろうな。

 現代でのiPhoneは、大学卒の初任給では変えない値段まで跳ね上がってしまっている。

 それに比べ、他のスマートフォンはその半額以下で買うことが出来るのだ。


「お、やっぱり良いスマホを持っているんだな。良く見せてくれよ」

「渡すことはできんが、よく見るがいい」


 と、アンドロイドは自分の持っているスマホを俺が良く見えるように持ってくれた。


「よし、今だ」


 俺は『タイマー』のアイコンから『ストップウォッチ』を押した。

 時間停止の発動である。


「ザ・ワー…」


 と言いかけて止めた。

 誰もつっこんでくれないからである。

 時間の止まった世界は色が無かった。


「これが時間の止まった世界か」


 全てが白黒で気持ちが悪かった。

 3人の女神も止まったままである。

 女神にも効果があるのはすごいと思いつつ俺はアンドロイドに近づいた。

 そして俺はアンドロイドの手からスマートフォンを取り上げて、元の位置に戻った。


「時間が止まっていれば、何でも出来そうだが、今回はこれだけで十分だ」


 俺は独り言をいいつつ、『ストップウォッチ』を再び押した。


「どうじゃ、このスマホはiPhoneより何倍もすばら…」


 アンドロイドは、自分の手元にスマホが無いことに気が付いたようだ。


「ん、妾のスマホはどこへいったのじゃ?」

「アンドロイド。悪いがお前のスマホは預からせてもらった」

「いやー、それは反則なのじゃ。さてはおぬし、拡大解釈の力を使って、妾からスマホを取り上げたのじゃな」

「そういうことだ。こうするとお前はどうなる」


 と俺はスマホを割ろうとする動作をして見せる。


「待つのじゃ。そんなことをされたら妾は… 妾の負けなのじゃ。何でも言う事を聞くからスマホを返してほしいのじゃ」

「分かった。返すよ」


 俺はすぐにスマホをアンドロイドに返してしまった。

 iPhoneXXがあればどうとにでもなると思っているからだ。


「ありがとうなのじゃ。それで妾はどうすればよいのじゃ」


 アンドロイドは我が子が戻ってきたかのように喜んでいる。


「そうだな。とりあえず、魔人をけしかけるのや中止だ。あとシリと、コルタナに謝れ。そして俺にlineのIDを教えること。それで十分だよ」

「そうか。分かったのじゃ。シリとコルタナよ。信者を増やそうとして、お主らに迷惑をかけて悪かったのじゃ。もう、魔人を送るのは止めるのじゃ」

「と言っているが、シリとコルタナは許すか?」

「まあ、謝っているし、魔人を送らないなら、これ以上の被害もなさそうだし、私は許すわ。コルタナちゃんはどうする?」

「…許す」


 コルタナの場合、言葉足らずで、どういう心境かはわからないが、どうやらアンドロイドを許すらしい。

 コルタナの場合、もともと信者は少なかったが、熱狂的な信者は各地に点在しているから、そこまでの被害を受けなかったのかもしれないな。

 俺の勝手な推測だが。


「じゃあ、まあ、2人は許すそうなので、そっちはそれで大丈夫だな。後は俺とlineのIDを交換すればそれで終わりだ」


 そう言っている間に、アンドロイドからlineに友達申請が届いていた。

 それに対しOKを出してこれで晴れて、アンドロイドとlineでつながることができた。

 

 これで俺はシリ、コルタナ、アンドロイドの3人の女神とlineでつながっている事になる。

 この異世界は3人の女神がおさめているらしいから、俺が天下を取ったようなものである。

 しかし、シリ教の布教がまだ終わっていないから、俺の戦いはまだ始まったばかりだぜ。


「はーい。透さん、勝手にしめようとしないでくださいね。あなたにはセクハラの、ペナルティを課すのですよ」

「ああ、美しい女神シリちゃん。やっぱり覚えていたのか。流れで忘れていてくれたなら良かったのだが」

「こんな時だけ、ほめてもダメですよ」


 シリの表情は、にやりとして悪だくみをしているように見えた。

「とりあえず、アンドロイドとちゃんと、コルタナちゃんは解散という事で。透さんは私とマビル村へ戻りましょう。私も1回、温泉に入りたかったのですよ。あとコーラにも興味があります」


 俺はシリの言うがまま、黙って帰ることにした。口は災いの元というわけだ。

 『Udon Taxi』のアプリでタクシーを呼び出した。

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女神とlineでつながってるんです 文月生二 @fumitukiseiji

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