エピローグ フラグ回収師と主人公 三話
「はぁー。なんでいつも僕が行動する度にラッキースケベが発生しちゃうのかな……周囲からの視線が痛いよ……それに、僕あまりそういう事が好きじゃないし、目立ちたくは無いのに……トホホ」
「おやおや⁉ そこの可愛い君、お悩みですか? 私達ならアナタの不安を解決できるかもしれませんよ」
「だ、だだ、誰ですか⁉ 急に! どこから現れて……」
「フラグのある世界にフラグ回収師アリってね。主人公の悩みを解決するのが我々の仕事ですから。ははー今回のターゲットは君だな? 安心したまえ! 我々フラグ回収屋は君の味方だ」
「おい、リーナ! いきなり天井から登場はホラーだし、もっと違う方法でこの世界に行けなかったのか?」
「そんな事より、どうだ海人? ワイシャツに赤色のブレザーは似合っているか?」
「話を逸らすな!」
リーナは肩をすくめ、図書室の椅子に座ると呆れるように言い放つ。
「しょうがないだろ? なんせ今回の我々のホームが屋上、しかも高校からスタートだからね。でも安心してくれ、既に私の服装は舞台となる高校の制服! とても不審者には見えないだろう?」
「だから魔王戦の時に……その制服を……」
「スタート地点が高校の屋上とは……非常に興味深い」
「海人! アンタ、さっきからリーナを批判して! 虚しいと思わない? リーナがどれだけ傷付いたか……謝って!」
「おい、あの恥ずかしいセリフを言うのは俺だぞ! 少しでも疑われない為に、着地は目立たないようにしたかった……だけなのに」
それなのに。
「け、警察だ……警察に連絡しなくちゃ、僕……殺されちゃう」
あからさまに青髪短髪の男の子に警戒されている。
いち早く警戒心を解かなければ、フラグの回収もクソったれも無いだろうし契約を交わすうえで、第一印象は重要だからな。
……なるべく良い印象を与えられるように、優しく言葉を選びたい。
「俺達は怪しい者じゃないよ、多分、いや本当に……俺の右隣に座る彼女――リーナが変なだけで。ただ俺達は、君の周りに起こる不幸の原因、根本を解決したいだけさ。君の力になりたいだけ」
「……」
「海人の言う通りだ! 故に我々は出会う者全てに、何度もこの言葉を掛けるのさ!」
俺は大きく息を呑み呼吸を整える。
以前は言われる側だったが今回は言う側に回る。責任は大きくのしかかり、緊張すら覚えてしまう。
創造神の愚行を知る被害者、奴の脅威から仲間を守れなかった主人公として、天国に居るアイツらに対しての贖罪と自分自身の救済――一から物語を始めるのだから当然だ。
なら最初の語り口は、このセリフで新たな物語、プロローグを始める事にしようか。
「俺の名前は真神海人、フラグ回収屋だ。あなたのフラグ、回収します!」
あなたのフラグ、回収します! 佐藤夜空 @michi78945
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