第20話  ガッツ

 息子が、幼稚園で川遊びをしてきた時の話である。


 家に帰ってきて、息子が嬉しそうに言った。


「お母さんにプレゼントがある」


「え、なんやろ?」


 息子は、ふくらんだビニール袋に入った、小さなカニを差し出した。


「これ、僕がつかまえたんやで!」


 見るとカニは、ハサミが一つしかなく、片眼がなく、足も数本なくなっていた。


 無邪気な幼稚園児との、格闘のすごさを物語っていた。


「あ、ありがとう(汗)……


 お母さん、プレゼントうれしいなー。


 ビンにいれて飼おうな」


「うん!」


 ジャムの空きビンに、砂と石と水を入れて、カニもいれた。


 餌にかつお節も入れて、排水溝用のナイロンの網でフタをし、輪ゴムでとめた。


 だが翌日、カニはいなくなっていた。


 あのひどい体で、石に登って、ナイロンの網を押し上げ、脱走したらしい。


 輪ゴムははじけ飛んで、玄関の床に落ちていた。


 それからいくら探しても、カニはみつからなかった。


 靴をはいて、グチャッ! どひぇー、となるのは、カニにも私たちにも不幸だから、靴も全部ひっくり返して調べたが、いなかった。


 私たちは、脱走したカニの根性をたたえて、ガッツと名付けた。


 ガッツは、クセモノ! であった。


 とりあえず、クセモノ! 2も、このあたりで〚完結〛である。


 最後までお読みいただき、ありがとうございました。



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ウチのクセモノ! 2 本城 冴月(ほんじょう さつき) @sathukihon

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