「中津留別の書」読書記録(221209)

西しまこ

「中津留別の書」『福沢諭吉教育論集』山住正己編(岩波文庫)

 好きな箇所を引用します。


「人は万物の霊なりとは、ただ耳目鼻口手足をそなえ言語・眠食するをいうにあらず。その実は、天道にしたがって徳を脩め、人の人たる知識・聞見を博くし、物に接し人に交わり、我が一身の独立をはかり、我が一家の活計を立ててこそ、はじめて万物の霊というべきなり。」


「人倫の大本は夫婦なり。夫婦ありて後に、親子あり。兄弟姉妹あり。天の人を生ずるや、開闢の始、一男一女なるべし。数千万年の久しきを経るもその割合は同じからざるをえず。また男といい女といい、ひとしく天地間の一人にて軽重の別あるべき理なし。」


「古今、支那・日本の風俗を見るに、一男子にて数多の婦人を妻妾にし、婦人を取扱うこと下婢の如く、また罪人の如くして、かつてこれを恥ずる色なし。浅ましきことならずや。一家の主人、その妻を軽蔑すれば、その子これに傚って母を侮り、その教を重んぜざれば、母はあれどもなきが如し。孤子に異ならざるなり。いわんや男子は外を勤めて家におること稀なれば、誰かその子を教育する者あらん。哀れというも、なおあまりあり。」

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