最終話 とっぴんぱらりのぷう
カエルは毎年、弟に求婚しに現れ、弟は歓迎のお茶会を開きなんだかんだと理由をつけて断ります。
「姉上がまだ結婚していないのに 僕が先に結婚するわけには行きませんから」
わたくしをダシに断っているのを耳にしたときには不愉快でしたが、その時に思ったのです。
もしかして、わたくしの代わりにトムがカエルと結婚する、というストーリーにすり替わっているのではないかしら?と おうじ と おうじょ、小さい『よ』一つの違いですから 脱字でもあったのかも知れませんわ。
「ごめんなさいね トム わたくしの代わりにカエルの相手をさせてしまって……」
カエルが求婚に来始めて3年ほど過ぎました。
トムが理想の姫君を求めての旅に出るというのです。
お城から出たことも無いトムに旅なんて出来るかしら?少々心配に思いましたが、優秀な執事のボブが一緒に行くというので、両親も私も喜んで送り出しました。人生に旅はつきものですものね。それに、本当にトムの理想のお姫様を連れて帰ってきてくれたらわたくし可愛がる自信がありますわ
お城の一番高い窓から手を振って、トムとボブを見送ります。
こんな高いところから おとぎ話の世界を見るのは初めてですが、トムとボブの進む先には『遺跡』の様なものが見えます。オペラグラスではよくわかりませんが植物に覆われたお城?でしょうか?もしかして眠り姫?え?もしかして、トムったら117歳のお姫様を連れて帰って来るのかしら? 義妹が多少年上でもいいけれどちょっと上過ぎる気がしますわ
その夜、トムは帰って来ませんでした。
両親もわたくしも、とても心配しているけれど、しっかり者のボブが付いているから大丈夫とお互いに励ましあってその日は休みましたの。
そして、今日お城の一番高い窓からオペラグラスで二人の姿を探していると、夕方近くになって豆粒の様な二人を発見しましたわ
幸か不幸か、二人の他に人影は見えませんわ でも 親指姫という姫も居ますものね、言葉を交わすまでは油断できませんわね
夕食の後
「実は 父上、母上、と姉上にお話したい事が」
そう切り出された時は”親指姫か?”と ドキリとしましたが、トムの話というのは幼いころに『カエルの王子さま』のストーリーを変えてしまったらしいという謝罪でした。
わたくしとしてはむしろお礼を言いたいくらいですから、優しく微笑んで謝罪を受け入れましたわ
それから、わたくしに素敵な殿方を紹介したいとか?
ええ ええ わたくし、カエルよりは野獣の方が好みですわ。野獣になった翌日には、キスをして元に戻してさしあげますから、変なものを食べないようにきつく言っておかなくてはいけませんわね
王子様に転生したのにストーリーに干渉したら呪いをかけられる一歩手前です TO BE @tobetakako
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