私と彼女の結婚生活

@WhatIsSankakukansu

第1話

 目の前に、女が横たわっている。先程まで唾を飛ばしながら怒鳴っていた彼女は、不思議と静かになっていた。

息はあるだろうかと、彼女の顔をそっと触ってみると、まだ温かった。そして、何かで滑っていた。

この滑っているナニカは、彼女の顔の脂だろうか、それとも彼女の血だろうか。

ぴくりとも動かない彼女を前に、私はただ座り込むばかりだった。確かに大人しくしていろ、とは言ったが、こうなるとは思ってもいなかった。

私は救急車を呼ぶべきだろうか、そう悶々と考えた。

しかし、どの道もう遅い。

迷っている間に、彼女の体は既に硬く、冷たくなっていた。

それに、彼女の頭には明らかな外傷があった。

妻を殺したと知られたら、私の世間体に傷がつく。

そんなことは、断じてあってはならない。

こうしている間にも時は進んで行く。

ふと壁にかかった時計を見ると、1時30分丁度であった。

私はそして私はとうとう心に決めた。

海に行こう、と。

明日も仕事があるのだから、急がなくては。

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