スタジアムは熱狂に包まれる。中央に魔導士が二人、彼らは3年に一度の魔導対抗戦の決勝の舞台で戦っている。銀髪の男は最新技術である魔導書のデジタル化による無詠唱を駆使する神童。無詠唱自体最近確立されたばかり。それをこの一年で実戦にまで仕上げた彼はまさに天才。


無詠唱魔法は確かに詠唱しない分速さや相手に行動を読ませないという利点がある、いやそれ以上にデメリットが少ない。ただ無詠唱の欠点は複雑な魔法を今は使えない。


そもそも魔導書というのは我々が魔法を使う上で必要な精霊との契約書のようなもの、詠唱は契約の実行。この二つが合わさる事で魔法が完成する。

デジタル化された魔導書は精霊との契約を行わず精霊の力を借りずに科学的に魔法を生み出している、ある意味錬金術師と呼ぶのが相応しいのかもしれない。


俺にもそんな力があれば良いのだが、この大会の参加資格も無ければあの舞台に立てるほどの実力もない。

ただ一つ学生時代唯一俺が発見した禁書に書かれた古代魔法の一つ会得した事以外強みがない。

そんな魔法を駆使しても彼らと対等に戦うことなどできない。俺は負け犬だ。肌身離さず持っている魔導書も結局は学園で支給された安い物。


原子がなんだのと勉強は今更性に合わない。禁書から数ページ頂いたコレで俺は天才を倒す。


「にいちゃん、良い目をしている」


突然金髪にサングラス、アロハシャツといかにも怪しい男から声をかけられた。


「魔導士さん、俺らの為に働いてくれないか?」


「いくらで?」


「詳しい話は向こうで」


男が指差す方はスラム街。身なりこそいいが男から出ているオーラは闘技場で優雅に決闘を見学している客とは全く違う。だからなのか俺は疑いもせず後をついて行く。


古屋に着くなり男は3枚の何かの紙を机に出した。

ついでに男はタバコを吸い始めた。


「今の時代魔導書を持つ魔導士てのはここじゃ珍しい、この三枚は俺が禁書から手に入れた」


禁書は法皇の魔力の鎖で封じられている。

そう易々と手に入る物じゃない。


「俺の息子の仇アデレを討ってくれ」


天才、今日優勝した神童。

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優劣魔導伝説 @hjkkssll

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