誰が為の異世界生活~男日照りの異世界で始める幸福論~

矛盾ピエロ

序章 誰が為の転移?

第1話 よくある物語の序章?

 人間、本当に想定外の事態に巻き込まれたときには喉が詰まり思考すらままならなくなるのだと、短い人生の中で初めて知った。滅多に無い貴重な経験だ。良いか悪いかは置いておいて。


 先程まで思い思いに青春を謳歌していた級友クラスメイトたちは突如切り替わった視界に自分と同じように絶句している。ポカンと口を開けた間抜け面が視界いっぱいに広がっているけど、きっと自分も同じような表情をしていると思うと笑うことはできなかった。


 青々と広がる晴天と心地のいい春風が吹き込む賑やかな教室から一転、視界一面が真っ白に染まるほどの強烈な閃光の後に視界に映ったのは荘厳という言葉をそのまま具現化したかのような豪奢な空間だった。


 ...うん、これはきっとあれだろう。級友の一人で聞いてもいないのにやたらと語ってくるサブカルちゃんから耳にタコができるほど聞かされたことがある夢物語の現象の一つ“異世界転移”。この状況はその物語の序章に随分とよく似ていた。



#####



 突然の異常事態の中で唯一幸運なことがあったとするならば異世界転移?した人間の中に教師の姿があったことだろう。それも男性教師と女性教師が1人ずつの2人。不幸中の幸いというやつだ...不幸には変わらないけれど。


 10と3年、自意識が確立され精神が成熟しつつある成長期とはいえ僕たちはまだまだ人生のひよっ子で、心身ともに未成熟な子供に過ぎない。こういう異常事態の時に大人がいることによる安心感というものは案外馬鹿にならないのだと身をもって知ることになった。


 実際、教師二人が率先して統率を図ってくれたおかげもあって今はクラスメイト全員がその場に座って教師二人が代表してこの場の責任者?っぽい綺麗な女性と話をすることになった。


 ボクが座っている位置がかなり後ろの方という事もあって、詳しい内容は聞き取れないけれど少し焦った様子の二人を見るにあまりよくない状況なのかもしれない。なにもせずに座っているのに飽きて首を振って周りの様子を窺う。


 教師以外の全員が座ったことで部屋の様子が分かりやすくなる。日光を多く取り入れるために壁の上部のほとんどを覆う窓からは明るい光が差し込んでいる。


 窓の外が明るいから多分今は昼だと思う。また周囲には壁に沿うようにして中世の騎士が着ていそうな鎧を纏った人たちがいた。


 ただ、不思議なことに兜は被っておらず晒されている顔が全員女性だった。こういう力仕事って男の仕事じゃないの?と暫く疑問のままに一人の騎士の方を見ていると目が合う。


 ...なんだか視線に言い知れぬ圧力を感じたけど無視するのは感じが悪いかなと思い、取り敢えず会釈だけしておいた。すると、突然女騎士さんはかっと目を見開いてきた。その眼光があんまりにも鋭かったもんだから、ビビってそれ以降その人の方を見ることは出来なくなったけど。


 周囲の級友たちにも多少は心の余裕が生まれたのかそこかしこの会話の声量が少しずつ大きくなってきた頃、話がまとまったようで教師と話をしていた綺麗な女性が座った一団に向けて一歩踏み出すとこう告げた。


「皆さま、はじめまして。私はレフィナド=E=ドゥラーク。ハイマート皇国の皇帝の一人としてこの国を導く者です」


 こういうのを鈴を鳴らしたような声音というのだろうか、その第一声は広い室内においても透き通るように響き、聞いた者に安心感を与える効果があるように思えた。


「誠に勝手なことではありますが、この度は我が国の窮地を救っていただくために皆様をこの国にお呼びしました。まずは私の話を聞いていただきたいと思います。その後で皆様にどうするかを決めて欲しいのです。...まずは我が国を襲う窮地について――」


 ごくり、と誰かが喉を鳴らす音が耳に入る。室内を緊張感が満たす頃、たっぷりと間を取ったドゥラーク皇帝陛下が口を開く。


「男日照りです」


 は?


 瞬間、その場の空気が凍った音が聞こえた気がした。


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