誰が為の異世界生活~男日照りの異世界で始める幸福論~

矛盾ピエロ

序章 誰が為の転移?

第1話 よくある物語の序章

 人間、本当に想定外の事態に巻き込まれたときには喉が詰まり思考すらままならなくなるのだと、短い人生の中で初めて知った。

滅多に無い貴重な経験だろう。良いか悪いかは置いておいて。


 先程まで思い思いに青春を謳歌していた級友たちは突如切り替わった視界に自分と同じように絶句している。ポカンと口を開けた間抜け面が視界いっぱいに広がっているが、きっと自分も同じような表情をしていると思うと笑うことはできなかった。


 青々と広がる晴天と心地良くそよぐ春風が吹き込むにぎやかな教室から一転、視界一面が真っ白に染まるほどの強烈な閃光の後に視界に映ったのは荘厳という言葉をそのまま具現化したかのような豪奢な空間だった。


 ...うん、これはきっとあれだろう。級友の一人で聞いてもいないのにやたらと語ってくるサブカルちゃんから耳にタコができるほど聞かされたことがある夢物語の現象の一つ“異世界転移”。この状況はその物語の序章に随分とよく似ていた。

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